韓日関係悪化の起源は韓国人蔑視で侵略を正当化しようとした明治政府以来の誤った政策にある‐。

牧師の立場から韓国のキリスト教について研究してきた鈴木崇巨さん(78、東京・品川)が導き出した結論だ。韓国に対する偏見を捨て、事実を事実として認めるところから新しい道が開けると説く『君は韓国のことを知っていますか?』を出版した。

日本人の韓国人差別の原因は@日本が島国で、自分の国だけを考えがちなことA距離的に近く、隣人を警戒する防衛本能が働くと分析。

こうした他人を恐れるという罪の性質は人間固有のものであり、克服には基本的な人間教育が必要だと強調する。日本人の心の中に植え付けられた歴史的な差別心の修正を迫りながら、「ボールは日本人の側にある」と説く。

本書の副題は『もう一つの韓国論』。「島国と大陸」「伝統と独創性」といった身近なたとえで韓国の歴史や文化、人々の特徴や性格も紹介し、「顔は似ていてもまったく違った民族性」であることを浮き彫りにしている。

鈴木さんが初めて訪韓を決意したのは1995年。それまでは植民地時代の記憶が鮮明で、鈴木さんの韓国訪問をためらわせていたのだ。日本の教会の一団とともに「祈禱院」を訪問し、3日間断食をしながら懺悔の祈りを捧げ、「気持ちがすっきりした」。次に訪韓したときは独立祈念館を訪ねた。

2007年から韓国研究を本格化させる。08年からは2年間にわたって3回訪韓、プロテスタント教会とカトリック教会の両指導者合わせて29人にインタビューした。

さらにキリスト教徒123人に「KJ法」という質的な研究方法を用いたアンケート調査を実施。韓国のキリスト教徒数が40年当時の2・2%から70年後の10年に35・7%に急成長を遂げた理由を調べた。結論は「純真で熱心な性質」ということだった。「(こうした)ベーシックなところで韓国を理解して」と呼びかけている。

鈴木さんは42年、三重県桑名市生まれ。隣近所には在日韓国人の子どもがいて一緒に遊んだという。高校生の時には大韓基督教会名古屋教会に出席し、牧師からその後の人生を決めるような大きな影響を受けた。母親からは関東大震災時の朝鮮人虐殺について聞かされてきた。

鈴木さんは「嫌韓派は過去の事実をなかったことにしようという傾向があるが、そうはさせない。兄弟のような日韓関係を望むならば、日本が韓国でなにをしたのかを知らなければならない」と話している。本書は東京の春秋社(03・3255・9611)から刊行された。1800円(プラス税)。 
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