● 韓国に“踏み絵” 対中包囲網を強化する米国

 足元、日増しに米国と中国の対立が緊迫感を増している。その背景には、政治、経済、安全保障など多くの面で、現在の覇権国である米国が中国に追い上げられていることがある。政治的には、中国は強力な経済をバックに国際社会での発言力を増している。また経済面では、「2030年までに中国が米国を抜き世界一の経済大国になる」との予測が増えてきた。さらに安全保障の面では、中国は海軍力を強化して南シナ海に進出するなど、米国の覇権は徐々に退潮した。

 そうした中国の台頭を許した一因として、米国のオバマ前大統領が目立った行動をとらなかったこともある。ある意味では、それがトランプ大統領を生んだ要因の一つとも考えられる。

 トランプ政権は中国の台頭を抑えようとかなり強硬だ。米国の保守派から見ると、トランプ大統領だからこそ中国に強い態度で臨めたともいえる。コロナショックが発生するまで、対中強硬姿勢は保守派層を中心にトランプ氏が約4割の支持率を守った主な要因だった。また、国際情勢の安定にとっても米国が中国に毅然とした態度で臨むことは重要だ。

 最近、世界経済の今後の行方を左右する5G通信分野で、米国が中国のファーウェイを締め上げている。これからも、米中対立はさらに先鋭化する可能性が高い。米国は英・豪・加を自陣に引き入れ、対中包囲網を強化している。独仏を中心にEUも中国と距離を取り始めた。

 米国は経済面で中国を重視してきた韓国に“踏み絵”を踏ませ、対中包囲網をより強化したいだろう。韓国はそうした変化に対応することが難しいようだ。わが国はアジア新興国やEUとの関係強化、米中から必要とされる先端技術の開発力を強化し、米中対立を国力引き上げにつなげることを目指すべきだ。

(中略)

 5月、米国は半導体生産力が弱いファーウェイを叩くために制裁を強化した。日米蘭の半導体製造装置などに依存する台湾と韓国にとって、制裁の影響は大きい。米国などの技術を用いることができなくなれば、台湾と韓国も半導体の輸出によって経済成長を目指すことが難しくなる。台湾のTSMCは米国の制裁強化に対応して9月からファーウェイ向けの半導体出荷を止める。それまでにファーウェイはTSMCからできるだけ多くの最先端の半導体の在庫を確保しようと必死だ。

 一方、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は態度を表明できていない。輸出減少に直面する韓国は、持ち直しつつある中国経済に半導体などを輸出し、目先の景気を何とか支えたい。ただし、中国との関係を維持しつつ韓国のサムスン電子が米国の技術を使い続けることはできない。

 仮に韓国が中国との関係を重視し続けるのであれば、米国は対韓圧力を強めるだろう。韓国が米国との関係強化を明確にできない限り、経済運営は難航するだろう。そう考えると、韓国は米中対立の狭間でかなり苦しい状況を迎えつつある。

 他方、英国、カナダ、オーストラリアは5G通信網を整備する政策からファーウェイを段階的に排除する方針などを決めた。対中政策を重視してきたドイツの姿勢も変わる可能性がある。例えていうなら、一時、中国に向かったかに見えた主要先進国の政策の振り子は、ふたたび米国に戻り始めたというべき状況だ。

(以下略)

ダイヤモンド・オンライン 7/28(火) 6:01
https://news.yahoo.co.jp/articles/09a2ce09d423e7e2c80db1f3e8f37a9ac8401d51