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日本でポピュラーな中華料理といえば「ラーメン」「餃子」「チャーハン」ではないでしょうか。しかし、この3本柱の中で、日本で食べられている形態のまま中国でも食べられているものは1つもありません。

まずラーメンは日本と中国で完全に系統が分かれており、中国では日本のラーメンを「日式拉麺」と表記して区別しています。

 中国のラーメンは、あっさり目のスープに牛肉や薬味をトッピングした「蘭州拉麺」が一般的です。トッピングや味付けによって種類が多少分かれますが、それほど多様性はありません。むしろ、醤油に味噌、塩味、豚骨など様々なスープがある日本の方がバラエティに富んでいます。また日本のラーメンの方がスープが濃厚で、油も多く、味が強いと言えるでしょう。

 餃子も日本と中国では異なります。ご存じの方も多いと思いますが、日本では「焼き餃子」が一般的なのに対し、中国では茹でて食べる「水餃子」が一般的です。焼き餃子も全くないわけではないのですが、中国人が食べる頻度でいえば圧倒的に水餃子が主流です。また中国の餃子は具材も日本とは異なっています。あまりニラやニンニクは使わず、豚肉や野菜、シイタケ、場合によってはトマト(意外とおいしい)なども使われており、種類も非常に豊富です。

 最後のチャーハン(焼き飯)は見た目こそ確かに共通していますが、中国のチャーハンは日本のチャーハンよりもやや油っぽく、日本のように“パラパラ”した食感はありません。また具材や味付けは地方によってかなり異なっており、筆者が昔好きだったのはトマトチャーハンでした。

冷やし中華も中華丼も中国には存在しない
 形態や味付けに差があるとはいえ、以上のラーメン、餃子、チャーハンは中国でも同名のメニューが一応存在しています。一方、日本では中華料理とされているのに、中国ではメニューとしてすら存在しない食べ物があります。「冷やし中華」「中華丼」「天津飯」などがそれにあたります。

いずれも、中国人は名称すら知りません。当然、ローカル系の飲食店で提供するところはありません。提供するのは、せいぜい一部の日本料理店ではないかと思います。

 冷やし中華と中華丼の発想の元になったと思われるメニュー「冷麺」と「蓋澆飯」は確かに中国に存在します。しかし、天津飯に関しては原形と思しきメニューも浮かんできません。諸説あるものの、そもそもなぜ「天津」という地名が付いたのかもよく分かっていません。

 なお、中国人の知り合いに天津飯がどんな料理なのか説明するため、中国の検索サービス「百度(バイドゥ)」で「天津飯」と入力して画像検索をかけたところ、漫画の「ドラゴンボール」に出てくる天津飯しかヒットせず、説明するのに非常に困りました。

「現地に合わせた工夫は当然必要」
 こういった日本人が勝手に中華料理として追加しているメニューを、中国人たちはどう思っているのでしょうか。


 知人の中国人たちに話を聞いてみたところ、結論から言うと誰もが「おいしければそれでいいんじゃない?」という具合で、問題視するような声は全く聞かれませんでした。

 質問に答えてくれた1人は、「同じ中国国内でも、地方によって料理の味付けや素材は違う。その土地に応じた工夫は必要だ」と言います。日本人が日本人の舌に合わせて料理の形態を変化させるのはむしろ自然なことだと理解を示しました。

 中国の料理をベースに日本人が発明した料理を「中華料理」と呼ぶことについては、「ちゃんと中華料理に敬意を払ってくれているような気がする。なにより、どこかの国みたいに中華料理も自分の国が発祥だなんて言わないのがいい」との感想を洩らしていました。



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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52406