【根室】道東沖サンマ漁の主力となる棒受け網漁が10日、解禁から1カ月たった。全国の水揚げ量の大半を占める根室・花咲港では前年同期の8割減と記録的不漁だった昨年を大きく下回る厳しい漁模様だ。不漁とそれに伴う浜値高騰のダブルパンチで、水産加工業をはじめ幅広い業種に影響が出始めている。札幌の店頭では旬のサンマが手頃な値段で買えず、秋の味覚を代表する大衆魚は食卓から遠のく一方だ。

 10日朝の花咲港。例年は1日数百トンの水揚げで活気づくが、この日は大型船5隻と中型船1隻の計30トンにとどまった。青森県の大型船、第65新生丸(184トン)の漁労長(48)は「魚群がソナー(水中音波探知機)に映らない。昨年より悪い」と肩を落とした。

 漁業情報サービスセンター(東京)によると、8月の全国の水揚げ量は前年同期比8割減の166トンで、うち花咲港が164トン。花咲港の水揚げ量は9月に入ってからも10日までの累計で同8割減の150トン余りと振るわない。

 主要な漁場は約1350キロ離れた北太平洋の公海で、昨年の同じ時期より150キロも遠い。それでも「魚群と呼べる程の大きな固まりがない。単発的に見つけたサンマを取っている」(漁業情報サービスセンター道東出張所)状況。日本漁船が公海で見つけた狭い漁場に台湾や中国、韓国の船が集中し、不漁の中で争奪戦の様相を呈しているという。

 根室・花咲市場でのサンマ1キロ当たりの単価は高値で2千円を超え、昨年の約2倍だ。サンマ加工品を製造する兼由(かね よし)(根室)の浜屋高男社長は「花咲港で1日数十トンの水揚げ量では絶対に足りない」と嘆く。薄利多売で稼ぐ従来の手法が通用しなくなっているという。

 別の水産加工業者は「昨年水揚げされた冷凍のサンマを原料に使っていたが、もう在庫が尽きる。今のような不漁と高値が続けば新たな原料を買えず、製品を作れなくなる」と窮状を訴える。

 影響は水産加工業にとどまらない。生のサンマを運ぶ発泡スチロール製の箱を製造する根室スチレン(根室)の高岡一朗社長は「まさかここまで不漁になるとは思わなかった」と驚く。加工業者向けの出荷がほとんどないのだという。

 道内各地に展開する食品スーパーの北雄ラッキー(札幌)は10日、札幌の店舗で例年の4倍近い1匹386円のサンマを並べた。足を止めた客が値段を見て立ち去る姿が見られた。同社は入荷量の激減でサンマの販売店舗を大型店に絞る。旬のサンマはチラシ広告を飾る目玉商品だが、「掲載できる見込みはない」という。

 札幌市中央卸売市場でも10日の中心価格は1キロ1500円前後と例年の約4倍。冷凍のサンマの卸値も3倍以上に跳ね上がっている。(村上辰徳、武藤里美、麻植文佳)

北海道新聞 9/11(金) 15:10
https://news.yahoo.co.jp/articles/c47e993f7e26a44ba5d06e8df079785edc93c9b0

根室市の花咲港で水揚げされたサンマ。漁模様は極めて低調だ=10日午前4時55分(武藤里美撮影)
https://i.imgur.com/B7jaLms.jpg