韓国の大手自動車メーカーであるヒュンダイは、2009年に日本市場から撤退して以降、日本人にとっては遠い存在となっていました。

 しかしそんなヒュンダイが、2020年9月16日から22日まで東京都内で日本未発売のFCV「ネッソ」に関するイベントを実施しています。
 
 そのイベントでは、韓国の人気アイドルBTS(防弾少年団)のオリジナルグッズが貰えるとあって多くのBTSファンが集まっていました。日本で発売されていないネッソとは、どのようなクルマなのでしょうか。

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東京都内でおこなわれているイベントに展示されたヒュンダイ・ネッソ

 ヒュンダイからは公式発表はありませんが、すでに日本向け公式ホームページも開設されていたり、ネッソの日本仕様カタログが公開されていたりするなど、状況証拠から日本市場復帰は秒読みといって間違いないでしょう。

 しばらく日本からは遠ざかっているヒュンダイですが、近年は欧米や新興国で順調に販売台数を伸ばしているなど、着実に力をつけているのも事実です。例えば、北米では、コンパクトセダンの「エラントラ」、コンパクトSUVの「コナ」などが好評を博しています。

 しかし、日本市場再進出の武器となるのは、そうした海外市場のベストセラーモデルではないようです。ヒュンダイの日本向け公式ホームページに掲載されているのは、燃料電池自動車(FCV)の「ネッソ」というクルマのみとなっています。

 電気を使ってモーターを駆動させることで走行するという点で、FCVは電気自動車(EV)と同様です。しかし、EVは充電することで電気を蓄えるのに対し、FCVは水素ガスを充填し、搭載された燃料電池によって空気中の酸素と化合させることで電気を発生させます。

 EVは排気ガスを出さないという点で環境性能に優れていますが、充電時間の長さに加え、航続距離が短いことから、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を持つクルマの代わりになるにはさらなる技術向上が必要といわれています。

 しかし、FCVはガソリンを給油するのと同等の時間で水素充填が可能なうえ、航続距離も内燃機関車と同等以上であることから、「究極のエコカー」として期待されています。

 日本はFCV開発においてリードしており、2014年にはトヨタが世界初となる市販FCV「ミライ」を発売、2016年にはホンダが「クラリティ フューエルセル」をリース発売しています。一方、2020年現在、海外メーカーでFCVを唯一市販しているのがヒュンダイです。

 おもに北米で展開されていたネッソですが、ミライやクラリティ フューエルセルが空力性能を重視したファストバックスタイルであるのに対し、デザイン性に優れたSUVスタイルが採用されているのが大きな特徴です。ボディサイズは全長4670mm×全幅1860mm×全高1640mmと、トヨタ「ハリアー」と同等のサイズ感となっています。

 もっとも重要となる1回の充填あたりの航続距離ですが、ミライが約600km、クラリティ フューエルセルが約750kmであるのに対し、ネッソは約820kmと一見ネッソが優れているように思われます。

 しかし、FCVの航続距離については、内燃機関車のように統一された測定方法があるわけではなく、あくまで各メーカーによる公称値となっており、走行状況によっては内燃機関車以上に大きく変化する可能性があることに注意が必要です。

 そして、FCVの心臓部ともいえるのが燃料電池スタックです。ガソリン車の場合、クルマのパワーのほとんどはエンジンのスペックによって決定されますが、FCVやEVの場合、モーターに供給される電気の力がそのクルマのパワーとなります。

 実は、FCVの課題のひとつに「パワー不足」があります。発進時から最大トルクを発生させることができるという特性上、FCVの加速感はガソリン車を上回りますが、最高速度や高速域での加速はガソリン車に劣るのが現状です。

 燃料電池スタックによるそれぞれの最高出力は、ネッソ(129馬力)、ミライ(155馬力)、クラリティ フューエルセル(155馬力)と、ミドルクラスのクルマにしては、各車とも少々非力な感は否めません。

 しかし、かつてFCVの開発を進めていた欧米の自動車メーカーが、実用化できるほどの出力を持つ燃料電池スタックを開発できなかったという過去を考えると、飛躍的な技術向上といえるかもしれません。

(続く)

くるまのニュース 9/18(金) 14:10
https://news.yahoo.co.jp/articles/613a7534c6b1e6770c35bc50afacfdbdbe93aa21