●フェイク情報を元に「処理水は過度な汚染状態」と煽って…

 今月から韓国の国会で行われている国政監査で東電・福島第1原発の処理水の海洋放流を巡る問題が話題になっている。

 10月13日、国会議員らは原子力安全委員会の担当者を国会に召集し、福島原発処理水問題の解決策について議論した。同日、親・文在寅政党である「共に民主党」所属の洪貞敏(ホン・ジョンミン)議員は、厳在植(オム・ジェシク)原子力安全委員長に「福島第1原発から海洋放水する水は汚染水か、処理水なのか」と尋ねると、厳委員長は「セシウムなどで70%以上汚染されているのは確かだ」と答えた。

 後で触れるが、これはまったくのフェイク情報である。

 洪議員が「汚染水を放出すれば220日以内に済州島に、そして400日以内に黄海に到達する可能性がある」などといった研究発表が出ていることについて質問すると、厳委員長は「周辺国家が影響を受ける可能性がある」とした上で、「海洋放出すれば、放射性三重水素の海洋拡散は避けられない」と述べた。

 一方、民主党の金相姫(キム・サンヒ)議員は「日本政府の情報と発表に依存すべきではない」とし、「日本政府が近隣国との合意もなしに、福島の汚染水放出を強行すれば国際法(UN海洋法条約第194条)違反の可能性が非常に大きい」と指摘した。

 10月15日、日本政府が福島第1原発処理水の放射性濃度を下げた後、海洋に放流する方針を決めたというニュースが韓国にも伝えられると、韓国政府は国政監査とメディア報道を通じて抗議した。 外交部(外務省に相当)は「国民の健康と安全保護を最優先基準とし、日本の汚染水処理に関する活動を注視している」とし、「日本に対し、汚染水処分に関する透明な情報共有と他国とのコミュニケーションをとるように依頼した」と、原則的な立場のみを表明している。

 もしも日本政府が福島処理水を放出する場合、福島産水産物に対する検疫手続きを強化するなどの措置を検討しているとのことだが、現時点ではそれ以上、韓国政府ができる対策は特にないようだ。
(中略)

 韓国メディアは「福島の汚染水問題は日本のアキレス腱になる可能性がある」と報じ、これを日本にプレッシャーを与える手段として積極的に利用しようという世論が形成され始めた。 韓国内では、福島原発の汚染水放流問題は「依然として日本を警戒して、NO JAPANを維持しなければならない」「保守野党がこの問題に対して積極的な抗議をしないのであれば、文在寅大統領と民主党を支持するべきだ」という世論形成がなされてきたのである。

 韓国政府は国際原子力機関(IAEA)に福島原発処理水の放流を阻止するよう訴えたが、残念ながらIAEAはその期待とは異なる立場を示しているようだ。

 今年2月に日本を訪れたラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長はNHKのインタビューで「原発処理水を浄化して海に流すのが現実的で一般的」とし「IAEAが海洋放流をモニタリングして関連事項を公表する方法で日本政府を支援することができる」と語り、日本政府の決定を尊重する立場を表明した。 IAEA事務局長のこのような発言は現実的であり、一般的な見解である。

 韓国政府とメディアはフェイク情報を煽り、日本政府の決定に対する「抗議」と「反対」を主張して国民の反日感情を煽るのに利用するのが精一杯だった。
(後略:韓国海洋沈没船舶の残像油問題)

田裕哲(チョン・ユチョル)日韓関係、韓国政治担当ライター
週刊新潮WEB取材班編集

ソース:デイリー新潮<福島原発処理水放出 ひたすら抗議の「文政権」 釜山近海960トン「残存油」は放置>
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/10190559/?all=1

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