韓国が「BTS(防弾少年団)」の兵役問題で揺れている。BTSといえば、いまや世界的に活躍する人気K―POPグループ。それでも兵役の義務があり、現行の兵役法で最年長メンバーのJIN(ジン)は満28歳となる今年12月に入隊しなければならない。

 メンバーが次々と入隊すれば、人気が失速するのではないか。こうした懸念から韓国では2年前から「国益のためにもBTSのような芸能人については兵役を免除すべき」という声が上がり、国会で改正法案が発議されていた。

 だが「発案されても、兵役問題は“免除”といった例外をつくってしまうとその後の適用基準が難しくなる」と韓国人女性は言う。実際、過去にも人気スターが入隊するたび議論されてきたが、同様の理由で立ち消えとなっていた。

 国民の間にはただでさえ「不公平」に対する不満の声が多い。兵役問題はその最たるもので「芸能人だろうと財閥の子息だろうと入隊すべき」という考えが大原則だ。BTSのメンバーも本音はどうであれ、「兵役は当然の義務。時期が来たら行く」と表明。ファンも「政治目的でBTSを利用しないで」と冷静だった。

 ところが、9月に新曲「Dynamite(ダイナマイト)」が米ビルボードのシングルチャートで2週連続1位を記録すると、空気が変わる。その経済効果だけでも1兆7000億ウオン(約1520億円)といわれるのだ。韓国人歌手として史上初の快挙で、今月は所属事務所が韓国証券取引所に上場。時価総額は一時11兆8800億ウオン(約1兆900億円)に達した。

 兵役の議論も再燃し、前出の韓国人女性も、「“免除”ではなく、“延期”なら妥当と思う。BTSは韓国経済にも影響をもたらしており、今、兵役に就くのは大きな損失となる」と、以前とは少し違った見解を示した。

 このBTS法案の成立を誰よりも強く望んでいるのは文在寅大統領だろう。経済効果はもちろん、韓国のイメージアップになり、若者の支持も得られるという思惑がある。

「ダイナマイト」は文大統領にとって起爆剤ともいえる。BTS株は上場後に暴落したが、低迷していた文大統領の支持率は兵役法の改正で上昇するかもしれない。一方で、国民の目に“過度な特別扱い”と映れば反発を買い、文大統領の株が大暴落する可能性も。危険をはらんだ爆薬でもあるのだ。

(児玉愛子/韓国ウオッチャー)

日刊ゲンダイDIGITAL 10/24(土) 9:06
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e201ca90bf55986e421049f6f2849376f8c685c

BTS(防弾少年団)/(C)ロイター
https://i.imgur.com/lvEeTuE.jpg