この法案のなかみを簡単にいってしまえば、

1、1910年〜1945年の日本統治時代
2、1980年の光州事件
3、2014年のセウォル号沈没事件

 この3つの「歴史的事件」を否定、ないしは虚偽だと公の場で主張したり、遺族やその子孫の名誉を棄損するようなことがあれば、懲役刑・罰金刑に処するというものになる。新聞、TVなどのメディアやインターネット、集会などで「歴史的事実」を否定するような発言をすれば即、アウトだというのだ。

 韓国与党は10月27日、歴史歪曲を罰するこうした法案を国会で通過させる方針であることを明らかにしている。

国内に「異論」を認めない文在寅政権

 このうち、2014年 4月16日に発生したセウォル号事件については、日本でも記憶に残っている人も多いだろう。修学旅行中の高校生を含む多くの犠牲者が出た転覆・沈没事件だ。船関係者や朴槿恵前政権の初動対応の杜撰さが被害を拡大させたとも指摘されている大変痛ましい事件だったが、一方で韓国国内では現在、この事件の被害者家族に冷ややかな視線が向けられている。

 というのも、セウォル号沈没事件の遺族たちは6億ウォン以上の補償金を受け取り、政府の配慮により税金の免税措置を受け、大学入試特別枠などの優待措置をいくつも受けている。深刻な格差社会にあえぐ韓国では、遺族たちが市民団体化してあまりに多岐にわたる補助を得ていることに、「さすがに行き過ぎではないか」と批判的世論があるのだ。

 法案は、こうした遺族たちに対しての“度を超えた名誉棄損にあたる発言”を処罰するとしている。だが、その基準は明確でないばかりか、すでに韓国には他人の名誉を棄損すればそれを処罰する法がある。なぜ、わざわざ新しい法律まで作ってことさらセウォル号事件に関して厳罰を用意する必要があるのか。納得のいく説明はなされないままになっている。


日本統治時代を褒めれば“敵”
 本法律案の中でもっとも目を引くのはやはり日本統治時代に関する部分だ。実際に法案に書かれた内容は後記するが、ここでは特に第6条を確認したい。

〈第6条(日本の歴史否定に内応する行為)

(1) 日帝の国権侵奪と植民地統治を称賛、正当化、美化または支持したり、日帝強占期の戦争犯罪を否定、または著しく縮小・軽視することを目的にしたり、そのような活動をする日本内の団体の中で大統領令で決める団体(以下「日帝植民統治擁護団体と称する)に内応して、その団体の活動を称賛・鼓舞、宣伝したり同調した人は3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金に処する。

(2) 日帝植民統治擁護団体から金銭、物品または財産上の利益を授受・約束したり、授受・要求の目的で(1)の行為をした人は5年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金に処する。〉

 日本統治時代を正当化・美化したり、戦争犯罪を否定する日本の団体を、韓国大統領が「日帝植民統治擁護団体」と指定したら、それに内応する人を処罰すると規定されている。注目したいのは「内応」という言葉だ。

 韓国国立国語院の標準国語大辞典は、「内応」という言葉を「内部で密かに敵と通じる」と定義している。つまり、「日本の朝鮮統治を擁護する団体=敵」という図式になっており、しかも“敵認定”は韓国大統領の一存で決定されるのだ。

 もし、韓国大統領が日本の歴史研究会、財団、言論を「日帝植民統治擁護団体」と指定したら、その団体は「敵」になり、たとえ韓国人がたまたまその団体と同じ主張をしたとしても、3〜5年以下の懲役または3000万〜5000万ウォン以下の罰金に処されることになる。

 さらに別の条項では、独立有功者、戦争犯罪被害者の名誉を毀損した場合、告訴がなくても、当事者が処罰を望まなくても起訴ができるとされている。慰安婦や徴用労働者の証言を検証しようとする声も、証言の矛盾を指摘する声も処罰の対象になる。当事者たちが望んだかどうかも、そこにはもはや関係がないというのだ。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/2177017a5f1cb41c333010a76d810fe2ab43ac31