https://i.imgur.com/wtPnsu4.jpg
高性能な半導体需要への対応や開発競争に充てる狙いだ=ロイター

【台北=中村裕】半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)は5日、2021年に過去最高となる9000人を採用する方針を明らかにした。台湾には現在約5万人の社員がいる。約2割の大幅増員となる。高速通信規格「5G」対応のスマートフォン向けなど高性能な半導体需要への対応や開発競争に充てる狙いだ。

同社の人材担当責任者が日本経済新聞の取材に応じ、今年の採用計画について「業務が大きく拡大し、市場からの技術開発への要求も高い。さらに優秀な人材を大量に確保する必要があると判断した」と語った。

半導体需要の急拡大でTSMCは21年、過去最高の280億ドル(約3兆円)の設備投資を予定している。すでに台湾では新工場の建設ラッシュが続くが、生産以外の間接部門などでも人材の増強が追いついていない。20年も約8000人を採用したが、足りない状況だ。

台湾では半導体のほか、鴻海(ホンハイ)精密工業などIT(情報技術)関連企業の好調も続き、人材の採用が困難になってきている。そのためTSMCは1月から台湾に勤務する全社員5万人を対象に、基本給を一気に2割も引き上げるなどの緊急対応で、人材の確保を急いでいる。

特にTSMCが生産する半導体は、世界でも最先端品にあたり、事実上、他社が追随できていない。そのため、例えば米アップルが「iPhone12」向けの頭脳にあたる半導体をTSMCに全量発注するなど、世界の大手企業からの注文が殺到している状況にある。

TSMCの20年12月期の売上高は前期比25%増の1兆3392億台湾j(約5兆2千億円)と過去最高だった。純利益も50%増の5178億台湾j(約2兆円)と過去最高で、急激な伸びを見せている。

日本経済新聞 2021年3月5日 18:43
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM05AD30V00C21A3000000/