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 先週、中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で李克強首相は国として戦略的に育成する8大産業、7大科学技術を発表し「今後10年にわたり一つの刃を研ぐ思いでまい進する」と述べた。米国の技術封鎖に対抗し、産業や科学技術の分野で自立し突破口を切り開くということだ。

 李首相は「10年間、刃を研ぐ」とする戦略分野として「大型LNG(液化天然ガス)運搬船」「新エネルギー車両」「新薬」などの新たな産業に加え、「人工知能(AI)」「集積回路」「遺伝子工学」「ヘルスケア」などの新技術にも言及した。その多くが韓国経済を支える主力分野、あるいは韓国が未来の主力産業と考える業種と重なる。中国の刃を研ぐ執念が実り、韓国の産業技術競争力を低下させた場合、韓国にとって国を支える産業は残らなくなる。韓国と比べて人口が29倍、経済規模が9倍、国の予算が8倍に達する巨大な中国による物量攻勢の前に、韓国経済は果たして持ちこたえることができるだろうか。

 韓国経済は第4次産業革命の巨大な流れの中で、新たな成長戦略を見いだすべき重要な岐路に立たされているが、韓国政府はこれまで4年にわたり選挙政治ばかりを続けてきた。誰も産業政策に真剣に取り組まなかったのだ。所得主導成長をはじめとする一連の反企業・反市場政策で経済の活力は水を浴びせられ、企業の意欲を萎縮させた。産業競争力を高めるための労働改革や規制革新は完全に後回しとなり、一つとして改革や革新は行われなかった。産業現場ではソフトウエア関連の人手不足が続いているが、これに必要な人材を育てる大学のコンピューター工学科の定員は15年連続で凍結されている。半導体で生きている国がサムスン電子の半導体工場に送電線を設置できないようにし、数年もの時間を無駄にしてしまった。

韓国政府は過去5年にわたり160兆ウォン(約15兆3000億円)を投入し、再生可能エネルギーや水素自動車、AIなどの新産業を育成する「韓国型ニューディール」と呼ばれる構想を進めてきたが、その中味はほとんどが過去の事業の繰り返しだった。老朽化した上水道の整備事業を「グリーン・ニューディール」と呼び、登記業務の電算化を「デジタル・ニューディール」という言葉でごまかすといったやり方だ。ニューディール事業における初年度予算の84%が既存の事業関連だったことも明らかになった。「国家戦略」という言葉を使うことさえ恥ずかしいレベルだ。

 世界と逆の方向に進む脱原発ドライブは、これまで世界最高とされた韓国型原発の生態系を崩壊直前に追い込んでいる。第4次産業革命を良質な電力なしでどうやって進めるというのか。第4次産業革命の代表的な分野とされる遠隔医療やカーシェアリング事業を行う企業は二重三重の規制の壁から逃れて海外に目を向けている。巨大な中国が総力戦で取り組んでいるのに、韓国政府は革新を妨害し、競争力を引きずり下ろす自害政策ばかりを続けている。その結果が出てくるのに今後10年もかからないだろう。


朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 記事入力 : 2021/03/10 17:01
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