【ソウル時事】来年3月の韓国大統領選の与党「共に民主党」候補の座を手にした李在明・京畿道知事(56)は少年時代に工場で働くなど貧困家庭から身を起こした「成功物語」が人々を引きつけてきた。一方でポピュリスト、反日の評がつきまとう。10日の演説では「日本を追い越す」と対抗意識をあらわにした。


 7人きょうだいの貧困家庭で生まれ、工場で働かざるを得なかったため、中学、高校は通えなかった。検定試験を受けて卒業資格を取得し、大学に進学。司法試験に合格し人権弁護士として活動した。

 李氏は10日、自らを「国会議員の経歴がないアウトサイダー」と称した。2010〜18年に首都圏の城南市長を務め、悪化していた市財政を立て直したほか、「若者手当」を支給するなど大衆受けする政策を推進。17年大統領選の党予備選に挑戦し、奔放な物言いから「韓国のトランプ」と呼ばれたこともある。
 18年に知事に当選後、公職選挙法(虚偽事実公表)違反などで起訴され、失職と被選挙権喪失の危機に直面したが、20年10月に無罪が確定。一躍大統領選の有力候補に浮上した。

 政策面では「ベーシックインカム(最低限所得保障制度)」導入が持論だが、「非現実的」と批判されると「経済成長」を前面に掲げる柔軟性も見せた。政界関係者は「機を見るに敏。処世術に優れている」と評する。

 北朝鮮問題や外交では文在寅政権の方針を踏襲。8月に発表した公約では、対日外交に関し「歴史、領土主権などの問題では断固として対応するが、経済・社会・外交的交流・協力は積極的に推進する」と文政権と同様の「2トラック」戦略を主張し、関係改善への具体策には言及しなかった。

 城南市長時代には市庁敷地内に元慰安婦を記念する少女像の設置を容認。7月の記者会見では「(南北朝鮮でなく)侵略国家である日本が分断されるべきだった」と述べ、歴史問題をめぐり日本に厳しい認識を示した。国民の反日感情を政治利用するのではないかと懸念されている。


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