釜山市に住む60代男性Kさんはディーゼル車の計器盤に尿素水が切れそうであることを示す警告灯が点灯してから数日にわたって頭を痛めている。普段の3倍の価格である1リットル当たり3万5000ウォン(約3400円)で海外から直輸入したが、到着まで2週間待ちだからだ。Kさんは「トラックの持ち主だけが直面する事態だと思ったが、自分にも影響が及んで目の前が真っ暗だ」と話した。

中国の輸出規制に端を発する尿素水の品薄現象で混乱が拡大している。尿素水の原料である尿素の97%を中国産に依存しているため、中国が尿素輸出を中断したことで、ディーゼル乗用車133万台、貨物車55万台の計216万台が走れなくなる危機に直面したのだ。混乱が長期化すれば、宅配、貨物トラックだけでなく、消防車、救急車まで運転できなくなり、物流と公共セーフティーネット全体がまひしかねない懸念が高まっている。

 郵便局の宅配事業を担当する郵便局物流支援団は2日、尿素水を最大限確保するよう求める文書を各支社に送った。郵便局宅配は農水産物など生鮮品の割合が高いため、宅配車両が止まれば打撃が大きい。民間の宅配業者は最悪の場合、尿素水が必要ない旧型車両で配送を行う緊急計画を立てた。ソウル市も最近管内の消防署24カ所と119特殊救助団などに文書を送り、各消防署で確保した尿素水を1カ月分の使用量(150リットル)を除き、ソウル消防災難本部に直ちに返納するよう指示した。

韓国政府は4日、マクロ経済金融会議に続き、関係官庁による緊急点検会議を開き、対策を協議したが、これといった対策を打ち出すことができなかった。関係業界からは「中国が尿素輸出を再開すること以外に答えはない」という反応が聞かれる。

 10リットルが9000−1万ウォンだった韓国の尿素水販売価格は最近10万ウォンを超えた。尿素水10リットルで乗用車なら8000−1万キロを走ることができるが、大型トラックは300−400キロしか走れないため、供給不足による価格高騰が深刻化している。

 地方自治体も対応に追われている。ソウル市は最近管内の消防署に尿素水を使う非出動車両の運行を中止するよう命じ、ソウル地域のガソリンスタンドには尿素水の優先供給を求めた。緊急状況で最も早く動かなければならない消防車、救急車まで止まりかねない状況に直面した格好だ。

■「尿素水を買える場所はないのか」「リアカーを引かなければならない状況」

 尿素水不足で貨物トラックの所有者は混乱に陥った。4日午後、メッセンジャーのカカオトークに開設された「全国尿素水販売場所共有」というチャットルームには「警告灯がついて急いでいる。販売場所を教えてほしい」「始興ハヌル休憩所で売っているという話がある」といった差し迫った会話が飛び交った。宅配業界からは「このままではリアカーを引かなければならないのではないか」といった懸念まで示された。

 尿素水の需要が集中し、インターネット通販のGマーケットの販売上位10品目では1位を含む5品目が尿素水だった。クーパンでも検索ワードのトップが尿素水だった。中古ナラ、タングンマーケットなど中古品取引サイトでは尿素水が10リットル当たり5万−12万ウォンまで高騰したが、半数以上が「予約中」または販売終了状態だった。釜山の車両託送専門業者の経営者は「尿素水20リットルを入れても、釜山−ソウル間を3回往復したら終わりだ。尿素水の価格が10倍に高騰したため、輸送費用の上昇も避けられない」と話した。

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尿素水はディーゼル車から排出される窒素酸化物を軽減するための触媒だ。韓国ではロッテ精密化学、KGケミカルなど化学メーカーが石炭や天然ガスから抽出した尿素を中国から輸入し、蒸留水と混ぜて生産している。2018年9月に排気ガス規制が強化され、貨物トラックだけでなく、スポーツタイプ多目的車(SUV)、ミニバン、乗用車など全てのディーゼル車に尿素水を入れる必要がある。

 尿素水不足は9月15日に中国が突然尿素の輸出を禁止したことで発生した。中国国内の石炭不足で尿素生産が急減し、価格が高騰したため、輸出を規制し価格安定を図ったものだ。措置を受け、中国国内では尿素価格が安定に向かったが、韓国が打撃を受けることになった。業界によると、今年1−9月に韓国では車両用尿素の97%が中国産だった。中国産が東南アジア産やロシア産よりも価格競争力で優れているため、中国への依存度が高まりすぎた結果だ。韓国でも過去には尿素を生産していたが、価格競争力で押され、2011年のロッテ精密化学を最後に生産が中断された。

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