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 仁川市内で宅地造成工事を行っているA建設会社は2週間後、作業を中止しなければならない状況に陥っている。現場に投入されたクレーンや掘削機に必要な尿素水の在庫が底を突く危機を迎えているからだ。A建設会社の関係者は「重機1台につき一日10リットルずつ建設会社が尿素水を入れてくれているが、2週間分しか残っていない」と話す。最近では土砂を運ぶダンプカーも尿素水が入手できず、走行を中止するという声が聞かれる。関係者は「尿素水不足で工事が止まれば、マンションの入居も予定通りにできないだろう。入居が遅れれば、その後の影響は計り知れない」と語った。


■尿素水品薄で長距離輸送避ける

 尿素水不足の被害がますます広がっている。物流・輸送・建設・石油といったあらゆる産業分野で、今月末以降は持ちこたえられないという警告音が発せられている。韓国セメント協会には、「尿素水不足により走行をやめた事例が増えている」というセメント輸送トラックの届け出が相次いでいる。同協会関係者は「トラック運転手たちの間では、尿素水を節約しようと、長距離走行を避ける空気が広がっている」「このため、地方にある中小の建設現場でまず、セメント供給に問題が生じるだろう」と言った。ソウル市は8日、「尿素水を販売する規模の大きなガソリンスタンド8カ所の在庫量をこのほど調べたところ、残っている尿素水はほとんどなかった」と明らかにした。

 いまだに在庫を確保できていない個人の運送業者はまさに尿素水不足に直面している。荷主と運転手をつないでくれる貨物運輸業者は最近、ソウル−釜山間のような長距離を走る車が見つからず、困り果てている。物を満載した場合、200キロで尿素水10リットルを入れなければならないが、尿素水が足りない一部の運転手は契約を放棄しているのが実情だ。全国貨物自動車運送事業連合会の関係者は「最近は尿素水の価格も10リットルで10万ウォン(約9500円)まで上がっている」「長距離走行をしても金が残らない」と語った。

 尿素水不足で石油物流網もピンチに陥っている。石油をガソリンスタンドまで運ぶタンクローリーに必要な尿素水が不足しているためだ。現在、SKなどの石油会社が保有している尿素水の在庫は1カ月分もない。石油会社の関係者は「石油を送りたくても尿素水がなくて送ることができない」と話した。

 年末までの新車出庫用の尿素水を確保している自動車業界はまだ状況がましだが、キャリアカーの尿素水がなくなり、新車を届けるのがストップすれば、その影響がいろいろと出るものと見られる。国内自動車メーカーの関係者は「半導体不足で車の出庫がかなり遅れているのに、キャリアカー問題まで重なるのではないかと心配だ」と言った。

 今月末に小売各社がセールを行う「ブラックフライデー」を控えている電子業界も、尿素水不足により気が気でないのは同じだ。サムスン電子関係者は「これといった方法がないため、確保してある尿素水を節約しながら使っている」と話す。ある引っ越し会社の役員は「今は旧型トラックを借りてしのいでいるが、2月の引っ越しシーズンまで尿素水不足が続けば車がなくなり、引っ越しできなくなる恐れがあるだろう」と語った。

■これといった解決策はなし…長期化の可能性も

 中国が当分の間、輸出規制を緩和する可能性が低い状況なので、尿素水の品薄現象はかなりの期間続くだろうと懸念の声が上がっている。ある業界関係者は「ロシア・中東・東南アジアで輸入先を調べているが、まだ成果がないのが実情だ」と言った。

 「スポーツタイプ多目的車(SUV)などディーゼル自動車の割合が高い韓国の現実も状況を悪化させている」との指摘もある。韓国自動車産業協会によると、今年1−9月に売れた乗用車のうち、ディーゼル自動車の割合は16%に達するという。日本(6%)より割合が大幅に高いのはもちろん、ディーゼル自動車が多い欧州(約20%)にも迫る数字だ。これにより、尿素水の使用量は2015年の6250万リットルから昨年は2億2000万リットルへと急増した。2018年9月に排出ガス規制が強化され、SUVやミニバンなどのディーゼル自動車も有害物質を中和する尿素水が必需品となった。

 長期的な目で見て、韓国国内に尿素生産基盤を整備する必要があるという意見も出ている。設備構築には約2年かかる。大徳大学のイ・ホグン教授は「政府が補助金を出してでも、国内に尿素の生産能力を確保し、危機に備えなければならない」と語った。

チョ・ジェヒ記者、イ・ミジ記者、イ・ギウ記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 記事入力 : 2021/11/09 10:01
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