重度の知的障害がある長男の首を絞めて殺害したとして、殺人罪に問われた母親で韓国籍の無職尹常任被告(54)の裁判員裁判で、京都地裁は13日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡した。尹被告は精神疾患を抱えながら長年、一人で介護。増田啓祐裁判長は「同情の余地が大きく、強く非難できない」と執行猶予を付けた。

 判決によると、被告は昨年7月16日夜〜17日未明、京都市左京区の自宅で、長男の支援学校高等部2年金鍾光さん(当時17歳)の首をベルトのようなもので絞めて窒息死させた。

 鍾光さんは、2歳の時の病気で重度の知的障害が残った。会話での意思疎通ができず、入浴や着替えも介助が必要だった。尹被告はうつ病と、極度の潔癖症などの症状が出る強迫性障害を患っており、行政などの支援を十分に得ず、一人で介護を続けていた。

 公判では、尹被告に殺害を思いとどまる能力があったかが争点になった。

 検察側は、思いとどまる能力が残っていたとし、「周囲に悩みを相談できた」と主張。一方、弁護側は「うつ病の圧倒的な影響があり、刑事責任能力はなかった」と無罪を主張した。

 増田裁判長は判決で、尹被告が首を絞める前に鍾光さんが苦しまないようにと睡眠剤を飲ませたことなどに触れ、「冷静な判断力が残っていた」として限定的だが刑事責任能力はあったと結論づけた。その上で、精神疾患のない人でも絶望感を抱きかねない状態で、執行猶予が適当だとした。

讀賣新聞 2021/12/13 20:01
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211213-OYT1T50151/