韓国の尹錫悦大統領は、不透明な国際、経済情勢の中、日本との関係強化は「選択ではなく必須」(大統領府高官)と位置付けた。

 実利のために歴史を巡る「自尊心」は脇に置いた。

 尹氏は岸田文雄首相との会談後の共同記者会見で「韓国の国益は日本の国益とゼロサム関係ではない。ウィンウィンになり得る」と強調した。

 今回の訪日は、4月の米国国賓訪問、5月に広島で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)の機会の日米韓首脳会談も念頭に置いたものだ。米中対立やロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、「従来の(米中間で態度を鮮明にしない)『あいまい戦略』は通じなくなった」という現実的認識がある。

 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)で米国を威嚇する一方、短・中距離ミサイルの脅威にさらされる日韓は、米国の拡大抑止の信頼性に共通の懸念を抱える。経済面では昨年3月以来貿易赤字が続く。2019年の日本の対韓輸出規制以降、日韓の貿易規模は縮小しており、経済関係の回復が急務になっている。

 6日の元徴用工問題の解決策発表に当たり、朴振外相は「国力に見合った大局的決定」と説明した。政府に近い関係筋は「対日認識の転換だ。自尊心の争いをやめた」と解説する。韓国は国防費や1人当たりの国内総生産がほぼ日本に肩を並べる水準になった。大統領府高官は会談後「歴史認識でこれ以上日本を疑うのをやめよう、新しい未来に向かって行こうという意味がある」と語った。日本に歴史を巡り要求する時代は過ぎ去り、対等な協力関係を築ける先進国になったという意識がのぞく。

 尹氏は16日の在日本大韓民国民団(民団)関係者らとの懇談で「責任ある政治家なら両国問題を国内政治や自分の立場のために利用してはいけない」と訴えた。しかし、同様の実利外交を志向した李明博元大統領は、任期末の12年に「国内の論理に押され」(当時の高官)、島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸。「失われた10年」とも呼ばれる関係冷却の始まりとなった。

 韓国では政権交代ごとに北朝鮮や中国との向き合い方も大きく変遷してきた。会談では各レベルの政策対話など「両国の共通の利益を論議する協議体を早期に復元する」(尹氏)ことで合意。揺らがない共通の利益を見いだせるか、今後4年間の尹政権の課題となる。 

時事通信 3/17(金) 7:11
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