韓国の政治にはおかしな現象が一つある。企業に対する政治の態度だ。財界人の間では「私たちは罪人なのか」という言葉が交わされる。あたかも金を儲けることが罪であり、利益を残すのは厚かましいことのように感じられるほどだ。それでも選挙になると投票を呼びかけながら出す公約をみると、企業が役割を担うものがかなり多い。こうした二律背反的なことが韓国政治でずっと続いてきた。

政治家が企業をどう考えているかは、最近のプラットホーム企業に対する態度を見れば分かる。カカオの場合、政界では「前政権の恩恵を受けた企業」という言葉が公然と飛び交い、現政権の「憎い企業」と見なされている。しかし文在寅(ムン・ジェイン)政権当時にも与党(共に民主党)はカカオを「地域商圏を侵害した企業」「全方向に手を広げる企業」と激しく攻撃した。

ネイバーはどうか。「政府を詐称した、国民を欺まんした対国民詐欺をしたも同然であり、権力に握って肝っ玉が大きくなった」。与党幹部が院内対策会議でした発言だ。とんでもなく大きな罪を犯したかのようなこの言葉は、最近ネイバーが「マイカー」サービスで自動車税延納申請期間を案内しながら、マイカーが提供する中古車相場、保有車両規格に合うタイヤ案内など広告性の情報を出した問題に言及したものとみられる。公的な情報に広告を付けて商売をしたという指摘だった。しかし広告は無条件に悪いというわけではなく、公益情報が無条件に高潔というわけではない。広告も見る人との関連性や使い方によって役に立つことがある。

◆事実でなくても政治家の言葉で悪徳企業に

かつて、ある政治家が補佐官に「カカオに入ってこいと言うべき」と送ったメッセージが公開された。「入ってこい」という言葉には、政治家が企業を白眼視する認識が強く反映されている。その議員がなぜ入ってこいと言ったのかは納得しがたい。相手の党の院内代表の演説がカカオが運営するダウムのメイン画面に登場したというのが理由だった。さらに「入ってこい」と言った議員は以前にネイバー側で責任を負う立場の人だった。過去に国会に呼ばれた人が、立場が変わると反対の行為をしたのだ。

では、悔しい思いをしている企業はなぜ声を出せないのか。政治家、官僚が恐ろしいからだ。企業関係者が政府関係者や政治家と対話をすれば企業側の話を無視するという現場の声をよく聞く。「それは分かっている」「質問の内容に答えなさい」などの言葉で財界人が説明する機会さえ奪うケースが少なくない。

ある国会議員補佐官は企業関係者に「うまくいくようにできなくても、つぶれるようにはできる」という発言まで吐いたという。耳を疑った。このように力で一方的に沈黙させられる企業の声より、一方的な政治家・官僚の声がメディアで重点的に扱われ、企業は事実と関係なく社会的な罪人になることが多いというのが、企業側の共通した説明だ。

大韓民国の政治家と官僚がこのように企業を罪人扱いしながら、韓国ではどんなことが起きているだろうか。先日、台湾が韓国の1人あたりの国内総生産(GDP)を上回ったという報道があった。台湾の成長の中心にある企業はTSMCだ。各企業が設計した半導体を生産するファウンドリー事業をする。同社は台湾政府の積極的な支援の下、サムスン電子半導体部門との差を広げている。2023年1-3月期の売上高をみると、TSMCは22兆ウォン、サムスン電子半導体部門は14兆-15兆ウォンであり、差が大きかった。台湾は新規投資すれば25%の税額を控除する。韓国では15%を税額控除するという半導体法も、野党が「大企業への特恵」と主張して法の通過が遅れた。

台湾は新しく工場を建設する場合、3年ほどで完工する。しかし韓国は7-8年かかる。工場を建設する物理的な時間が7-8年ということではない。政治的な状況が、倍に近い工場竣工期間をもたらすということだ。例えばサムスン電子は京畿道平沢(ピョンテク)に先端工場を建設しながらも、さまざまな理由で送電線を連結するのに5年かかった。このような状況を考慮すると、むしろサムスン電子がTSMCに勝つのが非正常という考えになる。

こうした状況でも野党は尹錫悦大統領の訪米結果を低めることに没頭した。

以下全文はソース先で

中央日報日本語版 2023.06.07 16:26
(1)https://japanese.joins.com/JArticle/305253
(2)https://japanese.joins.com/JArticle/305254