韓国で尹大統領が就任して以来、日韓関係が改善している。
だが、それは尹大統領が構想する「国家改造計画」の一端に過ぎず、「G7級」の国家を目指す上での通過点に過ぎない。
反日感情はくすぶり続けており、抜本的な関係改善には「反日教育」にメスを入れる必要がある。尹大統領は踏み込めるか? 
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

【写真】韓国でくすぶり続ける反日感情、「ウソ」の歴史教育にもメス?
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 韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が誕生してから1年以上が過ぎた。それまでは「最悪の日韓関係」を更新してばかりいたが、当時は全く想像できなかった日韓関係の改善が進んでいる。

 前任の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の時代に市民運動として始まった「ノージャパン」(日本製品の不買運動)が終わりを迎え、今や若者を中心に多くの韓国人が日本に押し寄せている。日本製品に対する購買意欲も高い。韓国社会で絶大な人気を誇ったにもかかわらずノージャパン時代に撤退したサンリオも、「EDIYA COFFEE」という韓国カフェのフランチャイズチェーンとコラボを始めた。この調子だと、韓国の街中でサンリオショップが再び賑わう日も近いかもしれない。

 こうした韓国社会における対日感情の変化は、尹政権の友好的な対日政策のたまものである。ただし、それは尹大統領の最優先課題というわけではなく、尹大統領が構想してきた「国家改造計画」の一端にすぎない。

 尹氏は大統領候補だった頃から「国家改造」を公言していた。尹氏は2021年11月、大統領になるために「キングメーカー」の異名を持つ金鍾仁(キム・ジョンイン)氏に協力を依頼した。その時の口説き文句が「国家大改造が必要だ」だったという。金氏は、朴槿恵(パク・クネ)氏と文氏が大統領になるために力を貸した人物でもある。

 その国家改造計画とはどのようなものか。

■ 韓国が「中国を捨てる」

 (略)

■ ベトナムに接近、「世界牽引」を夢見る

 (略)

■ 日本との関係改善は「通過点」に過ぎない

 G7と肩を並べる国となることを夢見る尹大統領は、ベトナム訪問の直前にフランスで開かれた博覧会国際事務局の総会に出席し、2030年に計画されている釜山万博をアピールしている。尹大統領本人によるプレゼンテーション映像には、「江南スタイル」で知られるアーティストのPSYやK-POPアイドルのカリナ、そして世界的ソプラノ歌手のチョ・スミが登場。特にチョ・スミはフランス中西部の街フェルテ・アンボーの古城での自分の名を冠した声楽コンクールの創設を来年に控えており、ヨーロッパで注目を集めやすい。

 尹大統領は、サムスン電子に代表される韓国のテック企業のみならず、文化も含めてあらゆる面で世界を牽引する韓国の姿をアピールしようとしているようだ。ここでいう「世界」とは、尹大統領が演説で頻繁に用いる「自由」と共有する国と地域を指している。それゆえに、安倍首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」という概念も意識されているのだろう。

 世界には当然、日本も含まれる。つまり、韓国が世界を牽引する国になるためには、長年にわたってこじれてきた日韓関係をどうするのかは無視できない問題となる。

 ただし、日本にとって注意が必要なのは、尹大統領にとって日韓関係の改善は目標ではなく、世界を牽引する国家への改造に向けた通過点に過ぎないという点だ。韓国の反日感情は、政権が代わったからといって一夜にして改善するものではない。尹政権が終われば、再び反日感情が蒸し返す可能性もある。

 反日感情を根本的に改善するには、反日感情を植え付けてきた教育にメスを入れる必要がある。だが、現状ではその道筋は見えない。

■ 「反日教育」にもメスが入るのか

 尹大統領は現在、教育改革を進めている。だがそこで念頭にあるのは「脱競争社会」である。

以下全文はソース先で

JBpress 2023.6.29(木)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75805