【ワシントン=淵上隆悠】米中関係正常化やベトナム戦争終結に貢献した米国のヘンリー・キッシンジャー元国務長官が29日、
コネティカット州の自宅で死去した。100歳だった。故人のコンサルティング会社が発表した。

 米ソ冷戦のデタント(緊張緩和)を推進し、力の均衡に立脚した和平の実現を目指し、ノーベル平和賞も受賞した。
退任後も国際紛争のたびに積極的な提言を行い、世界の安全保障に大きな影響を残した。

 キッシンジャー氏は1923年にドイツでユダヤ人の家系に生まれた。
ナチス・ドイツの迫害を逃れるため、38年に渡米し、43年に帰化。
ハーバード大に進み、欧州外交史を研究して、54年に同大大学院を修了。ハーバード大学教授を経て、
69年からニクソン大統領の要請で、国家安全保障担当大統領補佐官となった。

 71年7月に国交のなかった中国を極秘訪問し、79年の米中国交正常化への道筋をつけた。
ベトナム戦争の終結を目指した和平交渉を主導し、73年にパリ協定を実現。この功績で同年にノーベル平和賞を受賞した。

 同年9月からは国務長官も兼務し、その後のフォード政権でも対ソ関係改善の外交政策を取り仕切った。

 77年に退任した後は、コンサルティング会社を設立して、歴代の米政権の外交アドバイザー的な存在となった。

 日本との縁も古く、学生時代に「日米学生会議」に出席したほか、退任後も何度も来日し、
日米欧の民間有識者らで作る政策提言機関「日米欧委員会」に参加するなど日本の国際社会での役割について提言を行った。

 著書も多く、欧米を中心とした17世紀以来の国際政治史を概観した「外交」は世界的な名著となった。
1992年から2009年にかけて読売新聞朝刊のコラム「地球を読む」に寄稿した。

読売新聞 2023/11/30 11:42
https://www.yomiuri.co.jp/world/20231130-OYT1T50114/