日本人というもの。四季折々の自然のなかで美しくも気高き、交わされたいつくもの言霊たち。
万葉集や古今和歌集を代表する和歌の数々にはその痕跡が認められる。平家物語の冒頭にある日本人の哲学には移ろう時に人が辿る運命が端的に記される。
我々は人を敬い、神を敬い、仏を敬い、自然を慈しみ、和を以て生き抜いてきた。
その歴史の中には、美しいことばかりではなかっただろう。たくさんの罪を犯した者や美を穢した者もいた。
しかし、江戸時代の治安は良く、牢獄が十余年も使われない時期があった。古代には争乱がない悠久の時間が流れ、縄文時代には殺人がほぼ起こらなかった。
日本人は勿論荒廃した時代もあった。室町時代や戦国時代には社会が混乱した。略奪や横奪もあった。
しかしそれらはほんの一時のことであり、元は穏やかで平和的な種族である。日本人の美しさは、そのコミュニケーションの中にある。
自然を慈しみ、人を敬い、神仏を崇める荘厳なる宇宙観。それはいつの時代にもあったものである。