◇失速
 だが、5月下旬の宣言全面解除後、官邸の足取りは徐々に鈍ってきていた。影を落としたのは安倍政権の体力低下だ。
 「アベノマスク」などが不評を買ったのに加え、「Go To トラベル」キャンペーンをめぐる迷走で批判を浴びた。改正法案の審議が始まれば、
首相が矢面に立たされるのは必至。最近、首相と会った自民党議員の一人は「表情にさえがない」と声をひそめる。

 菅義偉官房長官は7月19日、法改正はコロナ収束後の課題だとし、当面は風営法など既存法令を駆使して対処する方針を表明。
8月1日の民放番組でも「人権的な問題があり、簡単に改正できない」と明言した。
 「全国的に感染が増え、法改正作業どころじゃない」。内閣官房の職員はこんな事情も明かす。

◇ひずみ
 既存法令に基づく対応は無理も生じさせる。西村康稔経済再生担当相は7月24日、
感染防止ガイドラインを守らない飲食店で感染者が発生した場合、緊急事態宣言下でなくても感染症法を根拠に店名を公表する方針を示した。

 ただ、感染症法には店名公表に当たり「個人情報の保護に留意しなければならない」との規定がある。
福岡市の高島宗一郎市長は西村氏とのテレビ会議でこれに触れ、「店の同意を取らねば動けません」と異を唱えた。

 PCR検査の「目詰まり」解消は、国と保健所の連携強化が急務。ワクチン接種を全国に広げる前には副作用に関するルールの策定が必要だ。
「何をどこまでやるのか、そろそろ方針をはっきり出してもらわないと」。法改正に携わる政府関係者はこう語る。

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