ただ、やはり本来この作品は
本邦初演が大地真央主演だったことで明らかなように、
ヒロイン、リリー・ガーランドが主役の物語だし、
サイ・コールマンの書いた楽曲が
総じて非常に音域が広く、
更に迫力あるミュージカル唱法を期待している分、
女性だけで、つまりは女声だけで
すべての楽曲を歌う必要がある宝塚歌劇での上演を
難しくしている面がどうしてもある。
勿論、宝塚歌劇のセオリーに乗っ取って、
オスカーが立つように細かい配慮がなされているし、
オリバーに真那春人、オーエンに朝美絢を持ってくることで、
オリバーとその部下二人という図式にハッキリ落とし込んだのも、
影の主役とも言えるほど
大きな役柄であるレティシア・プリムローズに
エネルギッシュなパワーを持った演者ではなく、
敢えて品良くおっとりした貴婦人タイプの専科の京三紗をあてたのも、
オスカーを真ん中にする為の周到な目配りなのだと思う。
そうした配慮は勿論功を奏しているが、
やはり最も華やかにショーアップされたシーンを担うのは
リリーの真彩希帆になるし、
原田の良さがそうした場面に生きることも手伝って、
全体のバランスには宝塚歌劇としての厳しさも残る。