西欧中世社会を苛みつづけた伝染病に聖アントニウス病があった。

この病は、ライ麦に寄生する真菌が原因の壊疽性麦角中毒である。
真菌中毒は血管閉塞をひきおこし、肢体の焼けるような疼痛と
火のような赤い皮膚炎症をともなって、患者は黒褐色に変じた。
さらに壊疽化した四肢がはぎとられる。
「多くの人は腐敗してボロ布のようになり、聖なる火に食いつくされたごとく、
炭のように黒くなって」死んだ、という。

この病の守護聖人が3〜4世紀のエジプトの隠修士聖アントニウスである。