300万人乗せる翼に高松空港、飛躍への助走(上)
路線誘致へ事務所棟
2018年2月28日 2:00 日本経済新聞

四国の空の玄関口、高松空港は4月に完全民営化する。運営を担うのは三菱地所や大成建設な
どが設立した新会社。2017年12月にビル事業を開始、18年4月には管制などを除く空港全体を
運営する。路線拡大をにらみ、航空会社の従業員らが作業する事務所棟を新設するなど設備拡
充も急ピッチで進める。国内外から利用者を呼
び込む拠点として育つには、地域との協調も焦点となる。

空港ビルの増改築や事務所棟の新設を計画する(高松空港)
「利用者の動線はどうなっているのか」「濃霧や積雪時の対応は」。三菱地所、大成建設、パ
シフィックコンサルタンツ、シンボルタワー開発(高松市)の4社が17年9月に設立したSPC
(特別目的会社)「高松空港」。各社から出向した約30人の社員らは設備の確認や関係機関と
の調整、国からの業務引き継ぎを進めてきた。

完全移行となる4月までの半年間で「運営できる体制を整える」(小菅光裕常務)ためだ。
今後の具体的な投資計画などをまとめたマスタープランの作成も大詰めを迎える。4月以降は
まず事務所棟を建設し、2年以内の完成を目指す。

航空会社の営業所などが入居できる場所を確保することで、路線の増便や新規就航に弾みを
つける。既存の空港ビルの増改築や駐機場の拡張なども計画しており、改修工事中の作業場
所の確保にも応用できる。
空港ビルの増改築では保安検査後の搭乗待合所「クリーンエリア」を大幅に広げ、瀬戸内の食
材を使ったフードコートや土産店などを設置する計画。国際線エリアには免税店を拡充する
構想を練り、ゆっくりと買い物や食事を楽しめるようにする。三菱地所出身の渡部哲也社長は
「早めに空港に来て時間を消費してもらう」と語る。

現状は買い物を終えた利用者と搭乗時間に合わせて空港に着いた利用者が保安検査場前に集中
している。空港でくつろげる空間づくりは混雑緩和にもつながる。

空港での消費拡大にはアクセスの改善も欠かせない。高松空港は高松市中心部から車で南に30
分ほどかかる。利用者の大半は自家用車や旅客機の発着時間に合わせたリムジンバスで移動
する。空港からの二次交通の拡充に向け、関係企業と担当者間の協議も始めた。

高松空港の16年度の利用者数は185万人で四国の空港では松山に次いで2番目に多い。
国内は羽田、成田、那覇空港と結ぶ3路線がある。国際線は4路線が就航し、四国で最も充実
している。SPCは32年に空港利用者を国際線で82万人(16年度22万人)、全体では307万人ま
で伸ばす計画を立てている。
地元自治体も動く。香川県が約145億円を投じ、高松自動車道のインターチェンジから
空港まで続く道路を約6キロ延伸する予定。県西部や愛媛・高知方面からの移動時間を短縮
する。空港の非常勤取締役の西原義一副知事は「利用を想定する2時間圏内の人口を取り込め
る」と強調する。
高松市も空港と高松駅の中間に位置する高松琴平電気鉄道(高松市)の仏生山駅(同)を
将来的に市街地と空港などがある南部地域をつなぐ交通拠点とする方針。新駅の整備や線路
の複線化を進めている。