これまでのあらすじ
ワシはとあるスレッドに書き込んでいた。
普段はまとめサイトを見て、時々パラパラと2ch(現5ch)書き込む程度のライトユーザーだったワシは、ある時からネットストーカーに遭うようになる。
最初は特殊な言い回しや語尾の感じに既視感がある書き込みがいくつも並ぶなぁという違和感だったが、そのうちその不思議な書き込みはワシに話しかけてくるようになった。
その人物は、ワシが作っていたtumblrブログを褒めた。そこで書いていたネタの続きを知りたがっていた。そして直接接触してくるように促してきた。
その人物は段々と陰湿な下ネタのような気持ち悪い書き込みを交えるようになってゆき、薄気味悪さを感じていたワシは、その人物であろうと思われる人に会いに行くつもりはなかった。
その人物のTwitterには探していたマイナーな漫画の1ページが唐突に投稿されたり、意味深なエアリプをされたり、不可解なことがあった。
書き込みはエスカレートしていき、ワシは怖くなってきたので一旦ネットから離れた。
その後、きっかけは何だったのか思い出せないが、またネットに戻ると今度は掲示板で大炎上してしまい、サーバーが一時ダウンした。
殺すだとか、家に直接行くだとかたくさん書かれ、滅茶苦茶怖くなったワシはママンにTELして帰ってきてもらう。
その間にTwitterを見てみたが、
岡崎乾二郎は「はみだした小鬼は懲らしめなければならない」となんだか意味深なツイートをし、
堀江貴文は「なんとかうまく聞き出したいっすね」と呟くIT関係者？のツイートをリツイートしていた。
そのうちテレビでもワシを脅すようなことを流しているような気になる。
テレビでは「お前をアイドルにしてやるから、俺に挨拶しろ」と司会者やタレントの言葉を借りて流れた。
この時の「アイドル」とは今の自分の実力を鑑みてその意味を考えれば、「実力もないのにおじさんの下駄を履いて目立つ恥ずかしい人」だ。
脅してきて怖い相手なのと、そんな恥ずかしい思いはしたくないのとで、ワシは断固拒否した。
すると今度はワシのブログのネタを知りたがり、ワシはそれも大事にしていたものなので断固拒否した。 帰ってきたママンは大層心配してくれて、パソコンを封印してくれた。
ある日心配するママンと喫茶店でお茶を飲んでいると、遠くに座っている他の客がこちらを見つめながらわざと話し声を聴かせているようだった。
「あんな小学生みたいなやつが、人工知能の…」
「それが分かったらどうなるの？」
「これから大変なことになるよ…」
と話していた。
たしかにその時は、少し幼稚なデザインの帽子をかぶっていた。
tumblrブログのあのネタはもしかしたら、人工知能と関係があるのかもしれないと思うようになった。
そして違う日にショッピングモールを歩いていると、変な放送が流れたり、
駅のホームに立っていると知らない男性が蹴る真似をしてきたりして
テレビの脅しも止まらないし、精神が限界になってきていた。 ママンはその頃になると半狂乱でワシに精神
科を受診するよう説得していた。
ワシは嫌がったが、パパンにも説得され、最終的にママンに引き摺られて精神科の病院に行った。
診断は統合失調症。ワシはそれを治すためのしんどい副作用が出る薬を飲み、のたうちまわった。
そして、ワシはリビングの机の上でブログのネタの続きを書いた。
リビングで起こした行動は全て脅している方に伝わっている感触があったので、これで伝わるだろうと思った。
その通りだったようで、嫌がらせは止まった。
そのあと、すぐに人工知能のニュースが流れ始めた。
これで新しい時代が訪れるとキャスターは興奮気味に言っていた。
それがワシのブログネタに関係あるのかは調べてみたがよく分からなかった。
ちなみに笑える話だが、この時ワシは受験生だった。
受験なのにネットをしてしまうほど心折れた受験生だったので、この出来事があってもなくてもおそらく落ちていたであろう。
この事があってから受験に臨んだワシはもちろんただ一つだった志望校にも落ち、浪人続行決定だった。
精神的にボロボロになり、もう一度受験をする気なんて起きなかった。
その後の進退を書くと身バレするので詳しくは書かないが、ワシは自分ではドン底と思えるほどだった。半分自業自得とはいえ、かなり辛かった。
友達も出来ず、一人ぼっちだったワシは、やめればよいのにまたネット掲示板を見るようになってしまった。
自分が本当に病気であると信じたくなかった。
しかしどう考えても、自分に起こったことが現実であると信じられなかった。
ワシに起こったことの手掛かりは、掲示板にある気がした。 掲示板ではただひたすら会おうという書き込みをされた。
そしてそれに交えてえげつないセクハラ的な書き込みもされた。
向こうはこちらの名前と住んでいる場所を知っているようだった。
洗脳のように毎日毎日セクハラをされ
ワシはボロボロの精神を癒すために毎日毎日汚れた書き込みを脳みそに摂取した。
そして時々、「頑張ってるな」とか「頑張れ」とか向こうが書き込んでくるようになった。
友達がいないながらもコツコツ自分で勉強していたワシはその言葉がなんだか嬉しく感じられてしまった。
セクハラされながらも、段々とその人物に親しみを感じてきてしまう自分がいた。
今思えば、それは洗脳の始まりだった。
続きます。 セクハラや中傷を受けながら孤独な日々を過ごしていると
セクハラをしてくる人物の関係者が私塾に入るよう遠回しにアプローチされた。
私塾の主任講師はラジオで自分たちのグループにはツッコミ役が必要だ、自分たちのグループに入りたい若い人がいるって本当かなぁ？などと喋っていた。
その人たちはセクハラをしてくる人物が知っている情報を共有しているようだったので
勧誘らしきものは断固拒否した。
その勧誘動画に当時ハマっていた作家が出演し、その動画だけは興味本位で視聴したが、意味深で難解なことを話していた。
その作家が一時的に講師になる話があったらしいが、実現しなかったらしい。
ワシは実名に紐づけられて、統合失調症であると他人に認識されることを何よりも恐れた。
だから、行動のログの集積から特定されやすいツイッターなどよりも匿名の掲示板などのコミュニティをよく閲覧していた。
その頃から、ネットではaiueo700という統合失調症のような行動をとるユーチューバーに嫌がらせをするひどい遊びや
統合失調症をからかうアルファツイッタラーが現れたり、ネットで変な言動をとる人物を「統失」と呼ぶネットミームなどが生まれたりした。
そのような状況のネットで、その時自分に起こっていることを打ち明けてみても
「統失乙」など「キチガイキター」などと反応されるだけで、誰も真剣に取り合ってくれなかった。
そもそも自分の親ですら、半分自分自身ですら信じられないようなことを顔も知らない名前もわからない人たちが信じてくれるはずはないのだが。 ツイッターでは、セクハラをする人物と、その知り合いの私塾の関係者とがワシにエアリプをしているような気がした。
藤田直哉は統合失調症と診断された娘を持つ警察官が、娘に刺され最終的には自殺したという陰鬱なニュースなどを頻繁にリツイートしていたし
私塾の講師の友人は統合失調症の患者によくある妄想を図解した画像をリツイートし、「これはw」と笑うようなコメントをしていた。
時系列は複雑だが、概ね嫌がらせをしてくる人物の周りの人間はほとんど嫌なエアリプをしているように感じられた。
一時期、自分の仕事と似ているように感じられる他の人の仕事があり、その人の仕事を事前に知っていた事実もあり、
もしかしたら深層心理でその作品が心の中にあったのかもしれない、と匿名掲示板に書き込んだところ
その人たちの間で、「作品をパクるということ」が大きな話題となり
仕事を発表する時には自分が影響を受けた人物の名前と作品を全て掲示するべきだと主張する私塾の講師の友人や
同じ団体に所属する年下の作家の仕事の類似を指摘した私塾の講師の関係者などセクハラをしてくる人物の関係者の間で、暗にワシを糾弾しているような言論がツイッターで飛び交ったように感じられた。
その後何回も何回も「パクリと引用の違い」「芸術においての引用の歴史」など、使い古されたような議論がネットに流れていた。
嫌がらせをしてくる人物のある知り合いは「おじさんの巫女になりたくなかったら、風呂に塩水をいれて入れ」と言ったり、その後に透明のスマホの画像を投稿したりした。
他には、その人たちとは全然関係ないゲーム実況者のツイッターを見ていると、
いきなり嫌がらせをしてくる人物の仕事の画像を投稿するということがあった。 掲示板での書き込みも、最初はセクハラや会うことを促す内容から、中傷も増えてきていた。
薬の副作用で太ってしまい、それを気にしていたことを悟られると「デブス」などの書き込みが多くなったし
書き込みに言い返したり、拒絶するような書き込みをすると「精神障害」「わがまま」「かまってちゃん」「自己愛人格障害」など罵られ、人格否定のような書き込みもされるようになった。
逆鱗に触れた時などは数時間も罵倒の嵐が続くこともあった。
もちろん例の人物が一人で書き込める量ではないし、そんなに時間が取れるわけでもないだろうと思われるので、何人かを雇って書き込みをしていたと思う。
しかし、画面の向こう側の人物の人格の異常さは感じられた。
こんなに執拗に何年も粘着して一人の人間を痛めつけられるのはどう考えても普通ではない。
しかし、ワシは将来に対する不安や今まで端末越しにその人物と過ごした時間の長さや、孤独やかつて尊敬していた事実から、彼と会話をするのはやめられなかった。
今思うと自分は意地が汚い人物だと思う。そこにその人物はつけ込んだのだと思う。 
