スヴェトラーノフ/N響の1997年ライブ盤聴いた
全体として見れば秀演と言ってよいかと思う
スヴェトラーノフの棒は総じてややゆっくりめのテンポを採用しつつ
深い呼吸と間のとり方の上手さによってN響から密度の高い音色を引き出している
先日リリースされたヤンソンス/コンセルトヘボウ管ほど楽器間のバランスは考慮されていないにせよ
またその音色はさほど先鋭的だとか色彩感があるとか言えるようなものではないにせよ
静かに聴き手の心を浸すような説得力があると思う

ただ残念だった点もふたつある
ひとつは第1楽章の部分的なテンポ設定
きわめて重々しいテンポで冒頭のアダージョが進行したのちアレグロでは
比較的中庸で快適なテンポとなる
それはいいのだがアレグロに入ったあとも旋律の動きによってしばしばアダージョと同じくらい
場合によればそれよりも遅くなったりする
このような個所では情感の深さよりもむしろ音楽が停滞しかねないというネガティブな印象のほうが強く
その遅いテンポから再びアレグロのテンポに戻る個所では進行に音楽的必然さがあまり感じられず
ちぐはぐな感じになっているように思う
例えて言えば「やれやれやっと暗いところから出てこられた」という現場でオシゴトしている奏者たちの
安堵の声が聞こえてくるような

ふたつめは第5楽章の大幅なカット
422小節から516小節の間の97小節
第1楽章アレグロの主題が再現されひとしきり不安をかきたてたのちにロンド主題と融合するような形で
明るく鳴り響くまでの部分がその前振りの部分とともにばっさり切られている
音楽的にさほど重要ではないとの判断か
それとも最終盤に向けての楽員たちの体力を温存するための策なのか
いずれにせよこの部分は個人的に第5楽章のなかでもっとも好きな部類に入る部分なので
自分としては肩透かしを食らったような気分になってしまった
カットされた箇所のあと全曲の終結に至るまでの演奏がやたらに元気いっぱいに聞こえたのは気のせいだろうか