問題は当時は精々1週間前に留まっていたニュースの鮮度が
50年以上も経ってしまっていることである。

レコード会社が警戒していたのは、放送インフラがもつ絶大な配信力で
もともと税金を投入して整備された放送網の存在は
レコードを個人で購入させるための仕組みを前提から覆すことになる。
この利権を封じる手段が専属契約に含まれていたわけで
フルベンの場合は、どちらかというとイギリスでの国内法
つまりレコードのラジオ放送を禁止する法律が厳しく適用された。

ところが普通に考えてみると、ほとんどのクラシック演奏家は
レコード売上げで生計が成り立つようなことはほぼ皆無で
ステージでの演奏を中心に全ては巡っていた。
実はこの記録を膨大に所有してたのが、ドイツの放送局なのだ。
それもドイツ国内のみで有効だったFM放送向けに保管された。

今更気付くのは、1970〜80年代のライブ録音のリリースは
ラジオ音源=AM放送ということを偽装してレコード化されたことだ。
公式のラジオ実況が非正規録音という形で世に出ることのカラクリは
一層不可解な歴史として語られなければならない。