おじいさんは山へ柴刈りに
おばあさんは川へ洗濯に
現代音楽家は畑へ開拓に行きました

ところが畑は既に開拓されていて
種をまくだけになっていました

「これはこれは
 誰かが土地を開拓してくれていた
 じゃあ私は種をまいて水をやるだけだ
 一体誰だろう? 奇特な人もいるものだ」

現代音楽家は種をまいて水をやり家に帰りました
自室でピアノを前に曲の構想を練っていると昼になったので
昼食を食べました

午後もずっと曲の構想を練ってスケッチを取ったりしました
ところが出てくる楽想はありきたりのつまらないものばかりで
おのれの才能に自信を失いかけました
しかし委嘱の締め切りは迫っていたので急がなければなりません

夕方になって一人夕食の準備をしていると
彼は重大なことを思いつきました

「そうなのだ
 人が開拓した畑に種をまいたって
 当たり前な作物しかできまい
 おのれ自身で耕す畑に種をまくのだ」

現代音楽家は暗くなった外に飛び出し畑に向かいました
きれいな畑をほじくり返し、種をばらばらにくだいてしまいました
1時間も立つと畑は荒地としか思えない有様になりました
泥だらけ汗まみれの彼は息をついていました

(また明日耕せばよい
 明日は明日の日が照るのだ)