ストラヴィンスキーの音楽観を知る手がかりになるであろう音源として、
グザヴィエ・ロト指揮の「春の祭典」を紹介しておきたい。

Stravinsky's - The Rite of Spring (BBC Proms 2013 - François-Xavier Roth conductors)
https://www.youtube.com/watch?v=rq1q6u3mLSM

「ついに登場!ピリオド楽器のハルサイ」というのを売りにしてはいるものの、
本質はピリオド楽器を用いたことそのものにあるのではなく、
むしろストラヴィンスキーが志向したであろうサウンドに徹底的に近づけたこと。
情緒的なものをとことん排し、鬼気迫る表現で圧倒するなどといった小細工を弄することなく、
楽譜に書かれた音を正しく、あくまで明晰に再現するだけで、
こんなに楽しく、エキサイティングな音楽になるんだということを証明してくれた演奏。
スコアを見ながら聴くとよくわかるが、細部の複雑な音や、ポリリズムまでもが、
大編成のオーケストラに埋もれることなく、ちゃんと全部聴こえてくる。
この楽譜に書かれた音のみを明晰に再現するというのが、ストラヴィンスキーの望んでいた演奏であり、
それを考えるとなぜ彼が中期・後期とあのような作風になっていったかも納得がいく。
いや、作風という言い方は良くない。彼の音楽の本質は生涯を通じて変わっていないのである。
ぜひロトとシエクルには、中期・後期のストラヴィンスキー作品も演奏・録音してもらいたい。