ここ数年、ポスト・クラシカルのシーンで活躍するアーティストたちの多くが、続々とドイツ・グラモフォンやデッカからアルバムをリリースしている。
マックス・リヒター、ヨハン・ヨハンソン、ルドヴィコ・エイナウディ、オーラヴル・アルナルズ、ユップ・ベヴィン……

いずれも従来のクラシック音楽とは一線を画す作品たちが、歴史と伝統を誇る名門レーベルからリリースされ、
若い世代の音楽家たちにも影響を与えながら、いまやクラシック界のメインストリームのひとつと言えるほどに存在感を増している。

そんな彼らの音楽をひとことで説明すると、現代的なエレクトロニクスの手法と、
アコースティック楽器によるサウンドを融合させたインストゥルメンタル・ミュージックということになるだろう。
ひんやりとしたデジタル・ミュージックならではの肌触りと、あたたかみのある弦楽器やピアノの美しい響きが織りなす静謐な世界観に、私たちは魅了される。

「家具の音楽」を提唱したのはサティだが、彼らの音楽は21世紀における「家具の音楽」と言えるかもしれない。
日々の暮らしの何気ない風景の中に溶け込み、ふと気づくとそこにあって、心に安らぎを与えてくれる音楽。
その佇まいから「ナチュラリズム(自然派)」ともカテゴライズされ、ヨーロッパを中心に静かなムーヴメントとなっている。