>>400
ご指摘の通り、ありそうにない利得に対する賭けやAllaisの逆説を
「同時に」説明可能な適当なパラメータが見つからないという問題はありますね。

これについては、関数の特定化を精緻化することで(価値関数にboundを設けたり、指数のべき関数にする等)、
同時に説明しうるという主張があります(Cain, Law and Peel(2008)。
それでもプロスペクト理論にはSt. Petersburgの逆説を説明できない等(Blavatskyy(2005))の様々な困難があります。

そこで理論家たちは行動経済学が取り上げてきた事象に対して、
リスクと時間選好を定式化し直して説明する方向にあります(Fudenberg and Levine(2006))。
(つまり、プロスペクト理論でなくても別の理論でアノマリーを説明できるよと言いたい)
一方、多くの応用系の研究者は、パラメータの推計や関数形の精緻化よりも、
標準的な期待効用理論で説明できない事象をプロスペクト理論で代替的に説明しうるかという点に関心があり、
プロスペクト理論は完全ではないが、事象を説明できるから良しと考えています。
そもそも心理学生まれのプロスペクト理論(の関数形)は、効用理論に比べて、かなりアドホックですので、
経済学の分野ではいまひとつ受け入れられない人(厳密性を求める人)が少なからずいると思います。