上の説明に間違いはないが、これが垂直的貿易やましてグローバル化を推進している
過程かというと、実証家としての俺には、ちょっと単純化しすぎていませんかと思いたく
なる。

蓬田は、工程間分業を生産ブロック1と2とに分けるが、その基本的前提は、

(1) 生産プロック1 では  c1 < c*1

(2) 生産ブロック2 では  c2 > c*2

だという(蓬田 2006, pp.8-9)。

これが成り立たなければ、サービスリンク費用の低廉化そのものが意味を失う。ところ
が蓬田には、この(1)と(2)がなぜ普遍的に成立するのか、その説明がほとんどない。

第1章や第3章などを読むと、蓬田は労働集約度の違いがこうした事態を惹き起すと
考えているらしい。しかし、Jones and Kierzkowski (1990, 2001)は、修正・付加された
(augmented)リカード理論ではあって、労働集約的・資本集約的という概念とは直接は
結びつかない理論である。そうすると、フラクメンテーションあるいは垂直的国際分業の
拡大の本当の理由が蓬田(2006)第2章では説明できていないということになる。

実を言うと、この点までは、院生時代に読んだときには分かっていなかった。工程間
分業はこう説明できるのかと、素直に感心していた。