資本主義が変貌している。知識やデータが利益を生むようになっているのだ。その傾向は、GAFAにおいて典型的に見られる。
◇ GAFA+MS の時価総額が東証1部上場企業の時価総額を超える
 グーグル(アルファベット)とフェイスブック2社の時価総額の計は、166兆円になる。
 この大部分は、ビッグデータの価値であると考えられる。
 他方で、国民経済計算によると、2017年末の日本の知的財産生産物(ストック)は141.6兆円だ。
 グーグルとフェイスブックの2社の時価総額だけで、これを超えている。
 2019年末における東証1部上場企業の株式時価総額は、648兆円だ。
 グーグルとフェイスブックだけで、この約4分の1になる。
 GAFA+マイクロソフト(MS)の巨大プラットフォームの時価総額の合計は、、多分今年中に、1部上場企業の時価総額を超える。
 このような驚くべき変化が生じている。
◇ GAFAの価値は搾取で得られたものなのか?
 日本でよく聞かれる意見は、「GAFAは独占企業であり、消費者を搾取することによって利益を上げている。だから、規制し、課税しなければかけなければならない」というものだ。
 そうした側面がある事は否定できない。とくにネット販売において。
 しかし、基本は搾取ではない。
 「データの集積が価値を生み出す」という新しいメカニズムが作り出されていることだ。
「資本主義経済」の「資本」の意味が変化してきた。機械や建物でなく、知識やデータが価値を持つようになった。
 その意味で、新しい資本主義が生まれつつあるのだ。
◇ 研究投資が新しい経済価値の源泉
 国民経済計算によると、2018年度の日本の知的投資は29.5兆円だ。そのうち、研究・開発投資が19.2兆円になる。
 他方で、GAFAの研究開発費はつぎのとおり。
 アマゾン3.2兆円、アルファベット2.4兆円、アップル1.6兆円、フェイスブック1.1兆円。
 この4社の合計で8.3兆円。これだけで、日本の研究・開発投資の43.2%になる。
 2018年のフィンテック投資は、全世界で553億ドル(約6兆円)だ。
 そのうち中国が255億ドル(約2.8兆円)。これだけで、日本の研究・開発投資総額(19.2兆円)の14.5%になる。
 日本のフィンテック投資額は、5億4200万ドルだ。これは、全世界の1%程度でしかない。
 つまり、最初に見た日本の知的資産の貧弱さは、研究開発投資が少ないことの結果なのだ。
 日本の政府も企業も、米中プラットフォーム企業の拡大を防ぐだけではなく、自ら新しい経済活動に乗り出していく必要がある。