園芸民が異世界転生したらどうするよ?
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園芸民の得意分野で中世ヨーロッパ風の異世界をどう生き抜くか?
どう内政チートするか議論しあうスレです
ただしチートとジャガイモは禁止な 「何故かと言うと、その子は男性経験の無い純朴でオボコいサッちゃんだったのじゃね」
「純朴な淫魔って何ですかそれ。そんなものいるわけ・・いるんですか?」
「わしが知ってるキャラだけで数人おるね。エロい種族なのにウブい小娘、という設定が
たまらん、という客層は意外と多いらしくての」
「私の故郷で言うところの『ギャップ萌え』というやつですか」
「で、ちょっと聞いておきたいのじゃけど、ヤマちゃんは『抱きついてキスする』
って場面で、その先の展開に何も疑問を持たなかったじゃろ?」
「え、だってサキュバスですし」
「問題はそこなんじゃよね」
「え?」
「『サキュバスはエロい事を受け入れてくれる』それはまあ、一般論としては正しい。
しかしの、生物集団というのは例外の集合体みたいなもんじゃからね。
『エロい事をすると嫌われるサキュバス』というイレギュラーな個体もおる。
これが『個体差』というものじゃね」
次回「ようやく植物の話に戻るぞ」
その頃、宇宙植物はどうしても殻が脱げずに小休止していた。 「そうは言ってもそういうのは例外でしょう」
「では聞くが、ヤマちゃんは人間の女の子にいきなりキスするかの?」
「いや、さすがに人間相手なら、相手の反応を見ながら」
「『サキュバスにも純朴な個体がいる』と思っていれば、人間相手と同じ用心をしてるじゃろ?
サキュバスだから楽勝だー!という先入観で行動して、個体差なんて頭に無かったじゃろ?」
「それはまあ」
「植物栽培でもな、そういう御仁が多い。量産園芸種や野菜の固定種ならば
性質が一定じゃからマニュアル栽培でええんじゃけど、野生植物の場合にはそれでは
駄目なんじゃよね。個体差というものを考えて手を出さないと、突然ひっぱたかれる」
次回「宇宙植物の出番はまだですか」
その頃、宇宙植物は殻脱ぎを再開していた。 「つまり種名で判断することなく、個体特性を見て栽培を変えなければ駄目だと」
「まあそういう事じゃね。とはいえ宇宙植物なんぞという栽培情報が皆無のものじゃと
特性を把握するまでに長い時間がかかって大変じゃったが」
「おお、宇宙植物を育てるとかマッド錬金術師のような。てか育てたんスか!」
「宇宙植物は漢(おとこ)のロマン」
「まあそこは否定しませんけどもね。生長して暴れだしたりしませんでしたか?」
「わしが育てた株はどれも大人しかったのう。とはいえ凶暴な個体がいてもおかしくない、
というのが個体差というものでの」
「いやちょっとその、いきなり人類SOSになったら困るんですが」
「まあそういう時はリュウちゃんに煉獄滅神ブレスを2,3発たたきこんでもらって
宇宙植物に教育的指導を」
「何ですかその怪獣大戦争」
次回「宇宙植物はこう育てる」
その頃、ガタガタ動く巨大種子の周りに領民が集まりはじめていた。 「というか、今『育てた株はどれも』って言いませんでした?複数株を育てたんですか?」
「おお、3株ほどだがの」
「うわ・・宇宙植物3株って何それ凄い」
「いや、別に凄くないじゃろ。『女性3人と付き合ったから俺は女性について語るぞ!』
っていう男がいたらただの痛い人じゃろ。威張れるのは女を知らない連中を相手に
している場合だけじゃよね。まあ栽培自慢ってそういう痛い人が多いんじゃけど」
「辛辣ですね精霊王様。それはともかく、宇宙植物ってどういう花が咲くんですか?」
「それがよく判らんのよ。うちで一番古い株は種子から育てて150年ぐらいになるん
じゃけども、一度も咲いたことがない。種子の大きさから考えて10階建ての建物ぐらいに
生長してもおかしくないと思うんじゃけど、一定の大きさから全然大きくならんからのう。
この星の気候に合わんのかもしれんの」
「150年とかあっさり言ってくれますね。えーと、大きくならないんですか?」
「そうじゃね、2階建ての建物の屋根を越えるぐらいで止まるかの。背丈は半年ぐらいで
急速にそこまで育つんじゃけど、そこで止まってあとは外見的にほとんど変化せんね」
「まあそれでも十分に大きい気がしますが。室内栽培は無理ですねそれ」
「いや巨人族のご家庭ならば何とか」
「その発想は無かった」
次回「宇宙植物の特徴」
その頃、巨大種子の周りに近寄らないように警戒線が張られていた。 「いずれにしても、宇宙植物の栽培に興味が出てきました。育ててみましょうかね」
「ヤマちゃんならそう言うとは思ったがの。ま、ヒトの身で育てられるものには限界が
あるからの。自信が無い時はやめておくのも選択肢じゃからの」
「あー・・園芸を極めようとすると、栽培やめますか、人間やめますか、と問われる領域に
なってくるんですね・・まあ芸事ってのは本来そういうものですけど、この世界の場合は
『人間やめる』が比喩じゃないからなあ・・」
「ヒトの身を捨てる決心がついた時には相談にのるからの」
「まあ死ぬまでには考えておきます。あ、聞き忘れてましたけど、宇宙植物の樹形と
いうのはどんな感じなのですか?」
「まあ普通の植物じゃね。この星の植物と外見的に大きな違いはないわの」
「・・この星の植物の普通って、怪獣ですよねそれ」
次回「宇宙植物目覚める」
その頃、山田領防衛隊が宇宙植物の周囲に布陣を完了していた。 「怪獣という感じではないがの。一番近い姿なのはドライアドかの」
「ああなるほど、ドライ・・え?」
「ドライアド」
「えーと・・植物系の魔物で、緑色の髪の女の子」
「そう、それ」
「背丈が2階建ての建物の屋根を越えるぐらいの」
「うん、正しく理解しとるね」
「・・宇宙巨大植物がどうして女の子の姿をしているんですか!」
「それは収斂進化の」
「うわあああ、こういう展開だとは思わなかったあああ」
次回「そういうわけで」
そのころ、おおきなたね は ぱかん、とわれて、なかから げんきな おんなのこが
うまれました。 その後しばらくして、山田のことを「お父様」と呼ぶ巨大美少女の肩に乗って、
領内を視察する山田の姿を山田領で見かけるようになった。
彼女は、のちに山田領に開業した巨人族用の喫茶店「お帰りなさいませご主人様」で
バイトをするようになり、異世界の装束を参考にした、個性的なデザインの店員制服が
よく似合う巨大看板娘となったという。
ヤック・デカルチャー(ドワーフ語で「めでたしめでたし」の意)
次回「新しい産業」
お題>>102 聖ヨウミツバチ。妖蜜蜂族の中で最も貯蜜の風味が良い魔蟲である。
山田領ではこの蟲を使役して妖蜜を生産することに成功し、領主の名を冠した妖蜂場の
経営を開始していた。
しかし最近になって急激に妖蜜の生産量が低下していた。妖蜂の女王の話を召喚士に通訳
してもらったところ、黒い妖蜂の集団が出没して盗蜜しているという。
山田と召喚士は苦労して黒い妖蜂の女王を見つけ、話を聞いてみた。すると彼女達は
精妖王魔ルハナ蜂と呼ばれる魔界の蟲であった。農場で花粉媒介のブラック労働を
させるために魔界から強制召喚された、人間の被害者とも言うべき蟲達だった。
そして自由を求めて脱走し、今日に至ったということが判明した。
次回「侵略的外来種」
黒幕にいるのは、いつも人間。 山田は黒い妖蜂達を魔界に送り返す方法を探し出した。
そして領民達を集め、樹木医の一族に伝わる集団舞踏魔術「蟲送り踊り」によって
魔界へとつながる転移門を呼び出した。
黒い妖蜂達は夜空に飛び上がり、感謝の意を伝える集団発光飛翔を舞いながら
大きく、そして高く燃え上がる篝火の上を超え、転移門の向こうへと還っていった。
そしてまたもや起きた事件。
アサシンギルドに資金提供をうけた一人の男が試みた、暗殺者を人工的に作り出す技。
次回「禁断の錬金術」
その姿、愛らしく可憐なることが優れた暗殺者の資質なり。 ・・おや、お嬢さん、目が覚めてしまったかな?施術が終わるまで眠っていてもらう
予定だったのだけれど・・
あ、動いてはいけない。手足が寝台に固定してあるから、無理に動いたら痛いよ。
もう一度寝ようね。今お薬を体に入れるから。
あー騒がないで。お嬢ちゃんは病気になっていたから、今治療をしているんだ。
心配しないで早く元気になろう。体が良くなればお父さんやお母さんの
ところに戻れるから。
ん?おじさんの赤い服が気になるのかい?ん〜ふふふ、素敵な服だろう?
これはねぇ、劇辛愛好会の限定商品なんだ。辛い食べ物って素晴らしいよねぇ。
熱さとも痛みともつかない刺激が脳をゆさぶるあの恍惚感・・うふうふうふうふふふ。
毒を持つ動物は多いけれど、あんな麻薬的な刺激成分を持つ動物なんて存在しない。
あれこそ植物の神秘・・溶血毒や心臓毒も凄いけれど、辛さこそが至高の植物成分だ。
お嬢ちゃんも・・そう思うよね?うふうふふふふ。
おじさんは思ったんだ。人間の姿と、激辛植物の辛さが一つになった時、素晴らしい
暗殺生物が生まれるって。あの人達は猛毒植物のほうがいい、って言ってたけど、何も
わかってないよね。激辛が一番なんだ。そうあの赤い赤い辛さが熱さがうふうふふ。
ああ、よけいな事を話しすぎたようだ・・そろそろお薬が効いてきたかな?
安心して眠りなさい。次にお嬢ちゃんが目が覚めた時には、素敵な体になっていて
みんなが褒めてくれるからね。
どうして泣くんだい?これが済んだらお父さんやお母さんのところに戻れるからね。
嘘だ?これからお化けにされるんだ、もう二度と家に帰してもらえない、って?
どうしてそんな事を考えたのかなあ?・・さあ眠りなさい。おじさんはねぇ・・
・・君のような勘のいいガキは嫌いだよ。
次回「許されざる命」
山田領防衛隊が現場に踏み込んだのは、少女の生体錬成が終了した後だった。 暗殺用の合成生物、毒娘。体に流れる血潮はカプサイシン、その存在は歩くデス・ソース。
触れた者には辛さが染み渡り、皮膚が爛れて気道が腫れ塞がる呪われた少女。
生物錬成施設から助け出された彼女はただ一言だけつぶやいた。「・・死にたい」と。
山田は彼女の姿を見た時に驚いた。とても良く似ている・・前世の初恋の少女の面影に。
その絶望の涙を見た時に山田は思った。
自分が知っている、あの話と同じ結末にしてはならぬと。
たとえそれが、不可能と言われている事であったとしても。
次回「鋼の心の錬金術師」
「お前が死ぬ必要はない!なぜならば、俺が元の体に戻してやるからだっ!!!」 >>152
少女はその後、食事を摂ろうとはせず、しだいに衰弱していった。
だが、山田は結局、その苦しみの日々に終わりが来るまで何もできなかった。
生体錬成の術式は複雑きわまり、天才錬金術師でもなければ内容すら理解できない
ものだった。専門知識の無い山田がいかに意気込んだところで、どうにかなるもの
ではなかったのだ。それを悟った時、山田はーー
隣にいた天才錬金術師の肩をたたいて「頼むわー。費用は俺に回してくれ」
かくて錬金術師は無茶を言う山田に呪いの言葉を吐きつつも、不可能と言われている
生体再錬成に挑戦した。少女の両親の遺伝子構成と魔力属性を調べ、合成錬成体の
構成と比較。少女の体のオリジナル要素ではないと思われる構成因子を特定した。
次に外部由来の要素を排除するための膨大な術式を、並列式液浸型ゴーレム演算脳に
よる高速情報処理によって作成。これらの一連の処理をおこなわせる演算指示術式の
構築のため、錬金術師は徹夜の術式記述が続いた。しかし鋼の精神力によって
それを成し遂げた。
そしてついに、少女を元の体に戻すための並列三次元錬成魔法陣が完成したのである。
次回「そして」
山田は体力を使い果たした錬金術師におかゆ的な療養食を作った。 こうして少女は、生体錬成前の体に戻ることができた。
「元の・・あたしの体・・ご領主様・・あ、あああ・・」
泣き崩れる少女の背中を山田が優しく叩くと、少女の顔は少し赤くなった。
その後、彼女は無事に両親の元へと送りとどけられた。
「ご領主様、本当にありがとうございます。あ、あの・・ご領主様にまた会いに
行ってもよろしいですか?」山田は笑って、いつでも遊びにおいでと答えた。
「私・・ご領主様のことを・・す・・ええと、素晴らしい方だと思います」
そう言って真っ赤になった彼女は両親のところへ走っていった。
そして人間の姿から、激辛唐辛子キャロライナ・リーパーに似た肉塊のような姿に戻った
植物魔物の少女は、赤くて辛い汁を分泌しながら、帰っていく山田に向かっていつまでも
真っ赤な触手を振りつづけるのだった。
その後、錬金術師からの請求書を見た山田は泡を吹いて卒倒したという。
そして次の事件。山田領のはずれの廃屋に、猫獣人の浮浪者が住み着いた。
次回「野良猫が来た」
猫、それは害獣にして園芸家の天敵。 ある日、どこから来たのか、山田領に一人の猫獣人が現れた。
地球人であれば15歳か16歳ぐらいに見える若い娘でありながら、衣服を着たと言うよりも、
ボロ布を体に巻いたと言ったほうが適切な、すさまじい恰好をしていた。
その娘が一人で領境の廃屋に寝起きするようになった時、その噂はすぐに領内へと
広まった。彼女が人目を引いたのは、本来なら都市にしか生活していないはずの浮浪者が
辺境の地に現れるという異常な状況だったからでもある。だがそれ以上に
彼女の容貌が領民の興味を引き付けた。彼女は異様に可愛かったのである。
純白のつややかな髪に、オレンジと黒のメッシュという毛色も珍しかったが
黒目がちの大きな瞳に、整った小さな口の横から見える真っ白い小さい牙、
すらりと伸びた猫耳のバランスもまことに申し分なかった。人間の美少女の可憐さと
子猫の愛らしさに、さらに野獣の美しさを加えて3で割らずにそのまま、と
いった外見は、普通ですら可愛い猫獣人の標準をさらに上回っていた。
彼女ほどのお猫様ならば、下僕になりたがる人間はいくらでもいるはずである。
常識的に考えて、浮浪者になって廃屋で寝起きする必要はない。
何か特別な事情があって辺境まで逃げてきたのか、あるいは極度の人間嫌いか。
次回「野良猫その2」 どうやって生活していくつもりだろう? 領民の疑問はすぐに解消した。
専門知識も資格もない彼女が、生きるために選んだのは、体だけで始められる仕事。
人類最古の職業と言われる仕事の一つであり、普通の若い乙女ならば、考えただけで
躊躇するであろう汚れた生き方。
すなわち盗賊である。
最初に狙われたのは、なんと山田が暮らしている領館であった。
いかなる方法で忍び込んだのか、白昼堂々と数々の防犯結界をかいくぐり、
さらに警備の目も盗んで、領主室で仕事をしている山田ですら気づかぬうちに
ひそかに領主室に侵入していた。そして部屋に運ばれてきた昼食を食べようとして、
山田が手を洗いに行った隙に、彼女は領主机にそっと忍び寄った。
山田が領主室に戻ってきた時、美しき女盗賊は山田の昼食の焼き魚を口にくわえ、
二階の窓から風のように逃げ去っていった。
次に狙われたのは温泉旅館山田屋である。真夜中に金庫室前の警備当直室に
忍び込み、警備員の隙を見て鍵束を盗み取った。そして調理室の鍵を開け、収納庫内に
保管してあった、翌日の宿泊客の朝食に使われるはずだった魔獣サケハラスの切り身を
食い荒らした。
次回「野良猫その3」 その後、主婦の買い物かごから生魚が強奪される、愛玩獣の餌が横取りされるなど、
領民にも被害が広がった。そこで防衛隊が出動し、猫獣人の捕獲を試みた。
しかし姿を見つけて追跡してもすぐに見失い、また遠隔魔法の狙撃圏内までは
けっして近づいてこなかった。住居となっている廃屋を見張っていても、
敏感に気配を感じ取るのか、監視員がいる時には姿を見せなかった。
そこで山田は、餌付けを試みることにした。
食事を与えて満腹にしておけば、食糧が盗まれることはなくなると予想したのだ。
領館の家臣用食堂に定食が用意され、監視魔法で観察が行われた。しかし監視している
間は手つかずのまま放置されていた。そこで試しに監視を切ってみたところ、短時間の
うちに完食されていた。その後も猫獣人はほとんど姿を見せなかったが、
人がいなくなった時に食堂に来て定食を食べているようだった。この餌やりによって
領内での食料品の盗難はおさまった。
次回「野良猫その4」 しかし盗難に代わって、領館敷地内での猫獣人による乱暴狼藉が新たな問題となった。
雨の日に泥足で入り込んで廊下中に足跡をつけていったり、家具で爪を研いだり、
室内に抜け毛を撒き散らしたりした。
さらに植物栽培場に入り込んで鉢植えを棚から落として割り、猫草に似た細長い葉の
植物は手当たり次第に葉先をかじられた。かじった時に力加減を間違えて鉢から草を
引き抜いてしまい、裸苗になった植物がころがっていたりもする。
とどめに、食べた草と一緒に毛玉を吐いて周辺を汚している。
ぐぬぬ、このような悪行でも可愛いから許されるというのだろうか>>157
苗を植えたばかりの花壇はほじくられて用を足され、庭園に来た妖精が追いかけ回されて
領館に寄り付かなくなった。裏庭で平飼いされている庭竜は、猫獣人が出入りをする
ストレスで卵を産まなくなった。
山田も頭をかかえたが、飼い獣人にして躾をしようと思っても、人慣れしていない
のではどうにもならない。家臣からは、あくまで冗談ではあったが、食事に魔動車用の
不凍液を混ぜてはどうか、などという不穏な発言まで出るようになっていた。
次回「野良猫その5」 そんなある日のこと、メイドのミヤゲが困惑した顔で山田を呼びに来た。
聞けば、猫娘が領館の屋根の上で、避雷針にしがみついてガタガタと震えながら、
変な声でうなっているという。
山田が屋根に昇ってみるとミヤゲの言葉通りに猫獣人がそこにおり、見るからに
様子がおかしい。近づいても逃げようとはせず、虚ろな目で避雷針を握ったまま
時々ピクピクと変な痙攣をしている。
ひとまず鎮静魔法で眠らせて、療術室で診察してみることにした。
彼女の体を調べてみると、背中が妙に白く、その部分が弾力を失って硬くなっている。
山田はこの症状を見て、昔読んだ学術書の記述を思いだした。
「病状が進行すると精神錯乱をおこして高い所に登りはじめ、やがて何かにしがみついた
状態で体が固まってきて、まもなく命を落とす」
まさに今回の症状と一致している。
それは猫獣人の間で最も恐れられている、凶悪きわまりない伝染病だったのだ。
次回「冬猫夏草」
彼女は明日になれば全身から子実体が伸びてきて、周囲に胞子を撒き散らす。 異世界もののなろう小説のセリフに鹿沼土とか出てきて爆笑した。 そして山田の抗真菌呪術により、彼女の治療はあっさり終了した。
魔法世界なので、有効な術式がある場合にはその場で治るのである。
だが彼女は、正気に戻ったとたん周囲の人間をシャー、フーと威嚇しはじめ、
隙を見て病衣のまま外へと逃げだしてしまった。
しかし自分が病気を治してもらった恩義はしっかりと理解していた。
その夜、猫美少女は山田の寝室にそっと忍び込んできた。そして、自分には
これぐらいしかできるお礼が無いの・・と恥ずかしそうに言うと、寝ている山田の
枕元に、ネズミに似た小動物の死骸をたくさん並べて帰っていった。
それ以降、徐々に気を許した彼女は山田達の姿を見ても逃げなくなった。そして
食事の時間になると家臣食堂に来て、ニャーニャーと鳴いて食事を要求するように
なった。食後に食堂で丸くなって昼寝をしたり、山田が近づいて頭をなでても
指に噛み付くだけで逃げないぐらいまで馴れたので、隷属証明の首輪(枝に引っかかった
時には強く引っ張ると分解するタイプ。鈴付き)を与えられ、領館の一員となった。
その後、「働かざるもの食うべからず」の方針により彼女はメイド服を与えられ、
新しくできたカフェで働くことになった。職場ではほぼ終日寝ていて、起きた時に
毛づくろいをしたり、たまにお客さんからオヤツを貰ったりして接客に努めたという。
次回「猫の日常」
今はまだ、平和な日々が続いていた。 そして本日はたいへん良い天気である。
猫娘は勤務先のカフェを抜け出して、領館の裏庭を散歩していた。
猫なので勤労に関しては特に意識していない。
花壇の土がやわらかくて具合が良かったので、掘って用を足していると
庭園の隅にキラリと光るものが見えた。花壇を埋め戻してから近寄ってみると、
それは金色の指輪だった。
彼女は、誰が落としたのか、などと深く考えることもなく指輪を拾って
ポケットにしまった。拾得物として報告しようとは思っていない。
猫にそのような行為を期待してはいけない。
なんと、その指輪は古代森エルフの王が所有していた伝説の魔道具だった。
それを手にした者はあらゆる植物の生育と死を支配し、王の中の王となって
この世のすべてを我が物となすこともできる恐るべき指輪。
神にも悪魔にもなれる力を、今、彼女は手にしたのだ。
次回「緑指王の指輪」
その大それた力のことを彼女はまだ知らない。 緑指王の指輪。それは森エルフの(中略)深い地中に埋もれ(中略)
長い時を経て(中略)領館の庭に現れた。
その新たな所有者となった猫娘は、家臣食堂の調理のおばちゃんに指輪を見せた。
おばちゃんが興味を持ったので、猫娘はシシャモ的な魚の干物3本と指輪を交換した。
猫は指輪になど興味は無いのである。
かくて究極の魔道具の所有権はおばちゃんへと移った。
おばちゃんの指は太くて指輪が入らなかったので、指輪に革紐を通して、ペンダント
として使う事にした。この使い方だと指輪の魔力は発動しない。
おばちゃんにとって、それはただの綺麗なペンダントであった。
そして誰も気づかず、誰も知らず、事件は何もおこらなかった。
空は青く澄み、世界は今日も平和であった。
明日もまた、平和な日が来ることだろう。
誰もがそう思っていた。その日までは。
明日も今日と変わりない日がやってくる、そんな保証はどこにも無いというのに。
最終章「終わりの始まり」
その日の夜、北の島のほこらにあった魔王の封印が何者かに破られた。
雷鳴が鳴り響いて大地震がおこり、島は砕けて住民と共に海中に飲み込まれた。 ついに園芸界最凶と恐れられた存在、魔王ガーデナーが復活した。
配下の邪培十傑衆が再集結し、全世界への侵攻が始まった。
魔王は入手した植物をすべて自己流の栽培法で育て、それに適応できぬ植物は枯れた。
適応できた植物は飽きて放置され枯らされた。
園芸初心者には上から目線で半可通な栽培法を押し付け、納得せぬ者は発酵堆肥の山に
生きたまま埋められた。園芸歴の長い者を老害と呼んで新しい植物の栽培を強要し、
逆らえば肉骨粉にして有機ボカシに加工した。
園芸オークションでは相場を無視した高額で入札し、落札してから出品者への
無償提供を強要した。それを拒否した者は一族もろとも野菜屑と混ぜられ、発酵槽へと
送られた。畑の土はみるみるうちに肥えていったが、肥料の原料を知っている人々は
そこで作物を育てようとはしなかった。
園芸界にもはや希望の太陽は無く、園芸関連株の取引きは魔王への恐怖でたちまち
凍りついた。世話する者を失った花は枯れ、飛龍は空を捨て、人は微笑みを無くして
いった。
次回「魔王その2」 それでもなお逆らおうとする人間達を、魔王は許さなかった。
魔王の極大魔法によって地軸はねじまがり、大陸は引き裂かれて海に沈み、
地上は核の炎につつまれて総人口の半分を死に至らしめた。
精霊王達の力をもってしてもこの惨劇を防ぐことはかなわず、
その後の修復と蘇生には3日を要した。
この事態に対し、世界人族王会議は緊急動議によって魔王への対抗策を
協議した。そして国家の枠組みを越え、異なる種族同士が手を取り合った。
勇者を中核として各国からヒトと亜人の精鋭を集結させることが決定し、
史上最強のアベンジャーズ・パーティーが結成されたのである。
次回「無敵の勇者、ここに見参!」
その頃、山田は赤黒く染まった空を見上げながら、世界の終わる時、自分に何が
できるのか考えていた。そして今は、ただ一人で畑で水を撒いていた。 優秀な植物系戦士を挿し木したり組織培養で増やすべきだ 勇者一行は魔王に敗北した。
園芸に関する知識が皆無であったため、邪培十傑衆の植物攻撃に、見当違いの対応を
して自滅したのだ。
魔王は山田領から「緑指王の指輪」を奪い去って生態系を改変し、すべての植物は
魔王のしもべとなった。
ついに世界を統べた魔王は言う。栽培とは、飢えた心を満たすための捕食だと。
園芸家は、植物の命を食い殺さねば心が保てない生き物なのだと。
それに応えて一人の男が言う。
ならば花を育て、殖やし、守りながら我々の飢えも満たしていこう。
食い殺す相手が滅びてしまえば、我々も飢えて死ぬのだからと。
凡人はたとえ未来を信じても、一人でそこにたどり着く力はない。
だが男は、彼を信じる仲間達の助けを得て、まだ見ぬ光景を目指して進んでいく。
昨日の妄想は今日の希望となる。そして明日は。
彼の想いは、いがみあう国々の間に絆を結び、人々の心に種を播く。
最終回「あの丘の向こうに」
山田の最後の戦いが始まる。その結末は、生か、死か。 <翻訳者あとがき>
邦題「転生者山田の、剣と魔法の怪しい園芸」を公開する機会を得たことを嬉しく
思う。発表の機会を提供してくださったスレ主と、読む事が苦痛でしかないクソのような
駄文の連投を、生暖かく放置してくださった寛大なスレ住人に御礼を申し上げる。
本書は原題「qあwせdrftgyふじこlp」、通称「ルルイエの薄い本」と呼ばれる奇書で
ある。太平洋グアム島沖の深海に発生した異世界転移ゲートの、破壊後サルベージ調査
において、解析不能の箱に納められた状態で、日本語の手書き辞書と共に発見された
ものである。そこには山田と呼ばれる人物が無職のニートから、錬金術師の家の居候を
経て、自らの園芸知識によって貴族にまで成りあがっていく過程が記録されている。
その内容には意味不明の単語、理解不能な表現が頻出し、翻訳に苦労させられたが、
できるかぎり意味が通じるよう訳出に努めた。
(続く) (続き)
しかし文体の統一感の無さ、誤字脱字、あーしまった変な文章を投稿した等々の欠陥と、
全体に漂う中二病臭&頭の悪そうな内容がものひどい。
これらは即興で書き進めたことにもよるが、主たる原因は翻訳者の文才の無さに起因
する。もし真面目にお読みくださった方がいらしたならば、深くお詫びを申し上げて
おく。馬鹿が書く文章には第三者の視点による査読と校正、ストーリー修正が不可欠
であることを改めて痛感した。
なお、本書で最終回と呼ばれる部分に関しては発見時にすでに失われており、
この物語がどのような結末を迎えたかについては想像するしかない。
新たな資料が発見された時には、改めてご報告したいと思う。
2018年8月3日 翻訳者 花咲 那奈志
―完― 最後世界がどうなったかより、こういう終わりの方がらしいというか
自分はすごく楽しませてもらったよ ありがとう 少し膨らませて、なろうとかで連載したら、デイリーランクインは硬いクオリティだったと思う 流石になろうのランキングには無理だろう
そもそも普通の人には園芸で使う用語がわからない
かといって解説つけたら無駄に文字数使って余計読まれない >>186
そだねー
専門的な用語や概念が多すぎて一般には無理っぽいね
園芸家には面白かったけど ご感想ありがとうございます>皆様
下書き段階で誰かに読んでもらって反応を見ないと、どこがウケてどこがキモがられるのか
全然わからないので書き進めにくいんですよねー。
ご指摘通り「なろう」で書ける内容ではないです。仮に書くとしたら専門家の爺さん博士と
素人青年のコンビが異世界転移して話が始まる。
「むう、これはモザイク病」「し、知っているのですか雷電博士」
「人間で言えばエイズに相当する不治の病。しかも治療薬が見つかっていない」
(民明堂新光社からの引用解説文が入る)
みたいな流れで進める事になるでしょうか。
まあ、一般向けであれば植物は判りにくいので動物ネタで進めます。
昆虫美少女しかいない異世界「むしフレンズ」でハーレムを目指す主人公とか。
トゲオオハリアリのお姫様に言い寄られる。「私のはじめての人になって・・
あなたとの子供で王国を作っていきたい・・」
「博士、やります!」「早まるな。トゲオオハリアリでググれ」
みたいな。いやまて、需要あるのかその話。
ご意見、ご感想は今後の参考にさせていただきます。でも罵倒は凹むので勘弁してね。
痛い話を書いてる自覚はあるんで。 カマキリ美女やクモ美少女とお付き合いするのも命がけだね うーん、持ちネタはだいたい使い尽くしたので・・。
残ってるネタは園芸成分が足りなくて没にしたものしか残ってませんので・・。
・・まあどうせ数人しか読んでないだろうし、
くっっだらねぇ水着回とか書いても、止めに来る人はいないかもですが。
いや冗談ですからね?今まで登場した女性キャラを総登場させて水着コンテスト話とか
書けなくはないけども、イラスト無しの駄文だけでは萌える要素がないわーw ガタッ
塩素入り水だと良くない植物少女のために浄化効果のあるスライム水(トロミ有り)で満たしたプールとかですか ムチプリで棘があるサボテン娘
普段はシワシワのババアだが風呂に入ると絶世の美女になるテマリカタヒバ(復活草)娘
樹上で生活しウブ毛が美しいチランジア娘
痩せると男に太ると女になるテンナンショウ人間 むしろ逆に、異世界から現代に転生してきた魔法使い見習いに、現代の植物のイロハや使えない雑学を教える的な小説が読みたいw
くっさいくっさい花嗅いで悶絶したり、アガベからテキーラ蒸留したり、メープルの木からシロップとったり。
ダメかな >>196
「何?モヤシ?何だそれは・・今晩はそれを炒めて、穀物の上に乗せたものが晩飯?
他には何も無い?そ、それがこの世界の常識的な食事だというのか!」 >>197
むしろ
「なんだこの真っ白な食材は!…これが植物だと?しかもなんだ、日光を当てずに水だけで育てるなんて、常識外れだ!」
みたいなところから責めないと園芸である意味ないじゃん。
で、転生してきた奴が可哀想だからと日光に当てて育てて別物になるまでが園芸w >>199
リクエストされると書きたくなるからやめてwww ――これは魔王との最終決戦に至る前、まだ平和な頃の山田の物語であるーー
ある夏の日、王国南方の海上でタイフーが発生した。
タイフーとは、南大海において大自然の魔素(マナ)が局所的に集積し、巨大なドラゴン
の姿となって、陸地に上陸してくる現象である。その姿は幻であり実体は伴っていないが、
タイフーの進路に当たった都市は、タイフー周辺の魔力のこもった暴風雨により多大な
被害をうける。近年では、チバ領にあった私立の食虫植物女子学園が壊滅した事例がある。
多数の肉食系美少女が犠牲になり、学園長が失意のうちに亡くなられた事が悼ましい。
また、かつて王国南部のウチナー領には私設のバナナ園があったが、タイフーによって温室が
半壊し、誰もが閉園を予想した。ところが園主はくじけずに資金を調達し、地球の単位で
風速70mにも耐える強化温室に改築して再開園し、人々を驚かせた。そして改築後まもなく
最大瞬間風速80mの巨大タイフーがやってきて廃園となった。
かようにタイフーの被害は甚大である。
屋外に置いてある鉢植えなどはすべて吹き飛ばされるため、屋内に移動しなければならない。
人々はタイフーを静めるという伝承のある、ゆでて潰した芋に炒めたひき肉を混ぜ、衣を
まぶして油で揚げた料理を祭壇に捧げ、忌み籠りをしながらタイフーが通り過ぎるのを
待つのが常であった。
次回「その2」 ――これは魔王との最終決戦に至る前、まだ平和な頃の山田の物語であるーー
ある夏の日、王国南方の海上でタイフーが発生した。
タイフーとは、南大海において大自然の魔素(マナ)が局所的に集積し、巨大なドラゴン
の姿となって、陸地に上陸してくる現象である。その姿は幻であり実体は伴っていないが、
タイフーの進路に当たった都市は、タイフー周辺の魔力のこもった暴風雨により多大な
被害をうける。近年では、チバ領にあった私立の食虫植物女子学園が壊滅した事例がある。
多数の肉食系美少女が犠牲になり、学園長が失意のうちに亡くなられた事が悼ましい。
また、かつて王国南部のウチナー領には私設のバナナ園があったが、タイフーによって温室が
半壊し、誰もが閉園を予想した。ところが園主はくじけずに資金を調達し、地球の単位で
風速70mにも耐える強化温室に改築して再開園し、人々を驚かせた。そして改築後まもなく
最大瞬間風速80mの巨大タイフーがやってきて廃園となった。
かようにタイフーの被害は甚大である。
屋外に置いてある鉢植えなどはすべて吹き飛ばされるため、屋内に移動しなければならない。
人々はタイフーを静めるという伝承のある、ゆでて潰した芋に炒めたひき肉を混ぜ、衣を
まぶして油で揚げた料理を祭壇に捧げ、忌み籠りをしながらタイフーが通り過ぎるのを
待つのが常であった。
次回「その2」 だが、タイフーの上陸には恩恵もあった。
海洋からの膨大な魔素が内陸にもたらされ、動植物の生育が著しく活性化するのである。
そして、今回のタイフー上陸時を狙って、一つの実験がおこなわれようとしていた。
それは、大気に満ちた魔素を利用して、古代遺跡から発掘された謎の植物の種子の
休眠を打破するという試みであった。
しばらく前、古代ジョーモン時代の遺跡の調査において二粒の種子が発見された。
当時に湿地帯だった場所において、無酸素状態の泥に埋もれていたために、当時の状態の
まま残っていたものだと推測された。識別魔法で「名称不明・生命反応あり」と解析
されたため、王立植物園で植物育成魔術によって発芽が試みられた。ところが、
きわめて強大な魔力によって休眠の封印がほどこされており、通常の育成魔術では
休眠を打破できなかった。
そこで植物園は、タイフーが運んでくる厖大な魔素を種子に集積させ、休眠術式を
強制的に解呪する複合魔法陣群を考案した。そして今回、台風が直撃する山田領での
試験実施を企画したのである。
珍しい植物好き、および新しいもの好きな領主・山田は、自分も実験に参加させてもらう
ことを条件に、この計画を了承した。ただ、ここで問題になるのは、タイフー来襲時に
屋外に出ているのは、非常に危険だという点にあった。
次回「その3」 暴風雨による物理的な危険は防御魔術で対応できる。しかし大気中の魔素の状態が
不安定で、いつ魔力落雷がおきてもおかしくない状態になっている。魔力吸収スキルの
ある高位の魔術師や、魔素を養分として吸収できる植物系の魔物の場合、風雨防御の
術式が付与された衣服を装備しておけば、タイフーの時でも野外で活動できる。
ところが山田のような一般人は、魔素を完全に防御する装備を身につけていなければ、
魔力落雷が発生した場合には急性魔素中毒で死亡する危険があった。
だが、その程度のことで諦める山田ではない。体全体を包み、魔力的に外部と絶縁する
防水着「雨中服(うちゅうふく)」を錬金術師に開発させたのである。
地球のヘルメット潜水服のような無骨な装備を着込んでまで参加しようとする山田に、
錬金術師は少々あきれ気味であったが、いつもの事なのであえて意見は言わなかった。
そしてタイフー上陸の日。灰色の空には黒い雷雲が渦巻きつつ流れ、渦の中央の
雲の無い部分にはタイフーの目が赤く光っていた。地上では風雨が強くなるに伴い、
異常集積した魔素によって皮膚がビリビリする感覚が感じられるようになってきた。
領内各所に設置された魔素集積魔法陣では、領内の山田の家臣だけでなく、王都から
集まってきた物好き・・いや熱意に満ちた山田の知人達も、実験準備を手伝っていた。
次回「その4:ではこの世界の、水に濡れても安心な防具の数々を語っていこう」 実験目的の種子が設置された中央魔法陣において、防護服を着用して記録準備をして
いるのは、王立植物園の若き学芸員達である。ちなみに園長は領館の中に退避してお茶を
飲んでいる。彼は今回の実験が失敗した場合、山田に責任が及ばぬように名目上の責任者
として連れてこられたお飾りであり、最初から何も期待されていない。
実質的な指示は錬金術師が出している。
錬金術師は水に濡れても安心なプラグ・・もとい、ウエットスーツ的な、体のラインが
明確に判別できる防護服を身につけている。防御魔術が付与されているので服の厚みは薄いが、
物理防御力は鋼の鎧に匹敵する。体の動きにともなって、若い女性の身体的要素が
強調された状態で視認できる仕様である。ある意味では硬質素材のビキニアーマーよりも
攻撃力が高い。若い男性研究員達が必死になって横目で見ている。
全身タイツフェチの一名は、どうして顔が覆われていないのかと嘆き悲しんでいる。
その横では雨中服で全身を包んだ山田が、熱心に種子のチェックをしている。
隣にいる若い女性の身体的特徴よりも、植物に目がいくのは男性としてどうなのか。
これでは植物以外に付き合う相手がいなくなってしまう。なぜか書いていて胸が痛い。
山田の近くでは植物魔物のナナ&ナナ・ツーが、色違いのワンピース的な、幼女水着風の
かわいい防護服で走りまわっている。植物魔物には魔素たっぷりの大気はご馳走である。
たくさん食べると、ちょすいきゅーが大きくなるんだよー、と言いながら空気を食べる
真似をしている。実験の役には立っていないが場の雰囲気がなごんでいる。
次回「その5」 少し離れた場所にある主力補助魔法陣では、召喚士が術式の副監督として待機している。
彼女の防護服は、かつて異世界から召喚された初代勇者が、冥王との戦いに挑む際に
愛する少女を守るために作り上げたと伝えられる伝説の防具である。異世界の言葉で
スクミズと呼ばれる紺色の防護服は、胴体のみを覆う形状であるが、魔法付与によって
全身の防御力を著しく高める効力がある。召喚士に装備可能な防具としては、「精霊の羽衣」
と並んで最強クラスの装備である。さらに、特定の属性を持つ者は、着用者の姿を見た
だけで「魅了(チャーム)」の魔法がかかるという特殊効果も付与されている。
しかも召喚士は独自に凶悪な改造を加えており、魅了された者が、装備者の名前を
聞いただけで下僕と化すような視覚的符術を防護服に施している。すなわち、自分の
名前を白くて四角い術符に書き記し、胸に張り付けてある。
これによって特定属性の者に対する魅了効果は飛躍的に高まっている。
この防護服は伸縮率に富み、膨らみかけとも言うべき身体的特徴を隠すことなく表出
させている。彼女はこの特徴を無駄の無い機能美と考えており、他者の無駄な脂肪を
憐れんですらいる。この思想が男性視点の社会において、どの程度の割合で共有されうる
かについては調査する必要がある。
次回「その6」 召喚士のアシスタントをしているのは宇宙から来た巨大植物娘である。巨大な姿だと
細かい作業ができないためマイクロー・・小人化の魔法によって一時的に人間大に
なっている。彼女は防御力が高いので、水着的な防護服は着用せずに普通の服で参加
している。
雨で濡れている彼女を見て学芸員が心配し、雨具を持ってきた。しかし彼女は、
植物魔物には雨に打たれると腐る子もいますけれど、私は雨に当たっているほうが
調子が良くなるんですよ、と言って微笑んでいた。
だが、この行動は本人には問題なくても、周囲の人間は心おだやかでない。
彼女の服装は山田が普段着として用意したものだが、デザイン的には現代日本の
女子高校生の服装を参考にしている。すなわち白い半袖のスクールブラウスで
襟元にスクールリボン、紺色のスカートである。地球人であれば十台前半に見える
美少女が、この服装でしっとりと雨に濡れている。白いスクールブラウスが
肌にはりついて服の下のあれこれが透け、風紀的にけしからんとしか表現できない。
彼女は「人前では服を着るものだ」という教育をうけてはいるが、どうして服を着る
のかという本質を理解しているわけではない。そのため学芸員に見られても気にする
様子は無い。彼女は宇宙から来た娘さんなので、常識に欠ける部分もある程度はやむを
えない。だが山田は早く気付かねば保護者として失格である。だが、困ったことにまだ
何も気付いていないので、このまま話を進めていくことにする。スカートも濡れて腰の
ラインまでもがしだいに露わになってきている。召喚士は気付いているが、学芸員の反応
が面白いので放置している。
次回「その7」 別の地点にある第二補助魔法陣は、魔法技術は高くないが魔力耐性のある者達が手伝って
いる。王都からは女騎士団長と、庭師見習いの娘、イチゴ遣いの女匠が来領した。
女騎士団長は地球人であれば20代後半に相当するが、20代前半と言っても誰も疑わぬ
引き締まった肢体である。セミロングの金髪を結い上げ、防護服はミスリル糸を編み込んだ
銀色のワンピース水着風である。胸と腰以外はレース編み的な構造で素肌が見える。
女性用のあでやかなデザインであるが、同時に騎士鎧をモチーフにした勇壮さを合わせ持つ。
禁欲的な雰囲気もありながら、着用者の隠しきれぬ大人の女性の魅力が混じり合う。
相反する属性を両立させた装備が、えもいわれぬ怪しい雰囲気を醸し出している。
庭師見習いの娘は半袖短パンのセパレート水着風である。可憐で明るい色彩の、若い
女性らしい防護服である。さらにその上から救命用具と植物採集用具の入ったベストと
無属性の園芸用具をつるしたベルトを着用している。長靴的な履物と、軍手的な手袋も
身につけているので全体的な雰囲気は農ガールである。マリンレジャーではないので
方向性としてはむしろ正しいのだが、清楚なかわいい娘さんが残念な人になっている。
山田にまた会えたと喜んでいるが、山田は植物のほうに夢中である。
「なろう」であれば女性側から積極アプローチがあってハーレム要員なのだが、園芸板
なのでこれ以上の進展はなさそうである。
次回「その8」 バカなっ、スク○までは予想していたが濡れスケ服とな イチゴ遣いの女匠は、水着ではなく防護術式をほどこした布を体にまきつけた姿である。
具体的に言うと、胸にサラシ的な白布を巻いて下半身は布の下帯、つまりフ〇ドシである。
布地で覆われている面積はわずかで、肌の大部分が露わになっている。固くひきしまった腕、
修行で鍛えぬかれた割れた腹筋。魔力焼けで全身むらなく淡い褐色に染まった肌に、白い
布の対比が映える。若き女剣士の力強い身体が、雨の中でつややかに濡れそぼりつつ
躍動する。何かあった時は私が守ってやる!という表情がまことに凛々しい。
サクラ王女も見学したがっていたが、さすがに王族の参加は問題が多すぎて見送りと
なった。そのため高貴なる姫君の初々しい水着姿が描写されることはない。
山田領からは野菜配達員の魔女っ娘三人娘が手伝いに参加している。各自のテーマカラー
である赤、青、黄の防護服を着用している。デザインが統一されていないのでユニット
構成としては問題があるが、今回は広報活動ではないのでその点は追求されない。
「赤炎の巨乳様」の赤を基調としたビキニ風防護服は、フリルとリボンを装飾に使用した
女性的で華やかなデザインである。そして地球人であれば十代後半の、まだ幼さすら
感じられる容貌とは不釣り合いな、偉大なる母性の象徴がそこにあった。されど揺れ動く
大塊に認められるつややかな張りは、まだ成熟しきらぬ少女の肌のなめらかさである。
そしてウエストも少女らしい細さであることが、これまた不釣り合いな危うさである。
次回「その9」 「青風のツインテ姫」はネービーブルーに水色ラインの、競泳水着風のハイレグ防護服で
ある。背中が広く空いてクロスバックになっており、露わになった肩甲骨が艶めかしい。
一見するとスクミズに類似したデザインにも思えるが、着用者の違いから明らかに別物と
なっている。その腰周りは少女から大人の女性に変わりゆく境界時間を象徴するかの
ように、儚さと豊かさを合わせ持っている。
そして大きくはないが立派に充実しつつある膨らみが、召喚士の思想とは異なる方向性
がこの世界に存在することを示している。
「黄光の眼鏡ちゃん」は発展途上の体型を人前に晒すことを好まず、得意の光学魔法に
よって外観を隠蔽している。彼女の防護服はチラチラ動く光のモザイク模様に覆われて
具体的な形状が視認できないが、おそらく黄色いワンピース水着的なデザインであると
推測される。ちなみに索敵魔法によって魔力感知画像を描出すれば、光学隠蔽をされて
いても、隠されている若干控えめな物件の形状を確認することが可能である。
第三補助魔法陣では一般人と一般植物魔物が手伝っている。黒髪美少女メイドのミヤゲ嬢は、
白黒でフリルとリボンを多用した、いわばメイド風水着とも言うべき個性的な防護服を
着用している。この防具の防護力はきわめて強力で、過剰魔素だけでなく風雨も完全に
防ぐ。そのため大雨でも着用者の体は髪の毛一本たりとも濡れることがない。
ただし泳ごうとして水に入った場合には、ウォーターベッドのようにふよんふよんした
状態の水上を匍匐移動することになる。
ミヤゲ嬢は着痩せするタイプで、いろいろと微妙にはみ出しそうになる防護服にとまどいを
隠せず、赤くなって服のズレを直しつつ手伝いを続けている。
次回「その10」 植物魔物のハオルシア嬢は、以前に誘拐された経歴があるため「隠れ外套」を使用して
姿を見せずに作業に参加している。時々外套を脱いで空中の魔素を吸収しているが、外套
の下から現れたのは黒いレザー調の、フロントジッパー水着的な防護服を身につけた
豊満な草体である。この防護服は襟元を締めたまま、ジッパーを開けて胸元のみ開放する
のが装備時における重要なポイントである。装着者の見本画像を、人目の無い場所で
ググって頂ければご理解いただけるであろう。普段からゆっさゆっさ、たゆんたゆんの
貯水球が吸水してぱっつんぱっつん、ばいんばいんに肥大し、ジッパー開放によって大変な
ことになっている。その中に何かをはさんだとすれば、ぷにぷにのぷるんぷるんであると予想される。
同じく植物魔物のセスキは、木の葉で要所を部分的に隠しているが実質的に全裸である。
若い学芸員がセスキの花器に興味を示したので、木の葉をはずして披露している。
フラグランス審査で優秀な成績をおさめた芳香に、学芸員はとろけるような顔になっている。
みみみ、蜜の味も知りたいです、と言って了承され、息を荒くしている。
植物の生殖器を詳細に観察している、と書くととても人前でする行為とは思えないが、
「花を見ている」を難しく言っているだけである。扇情的な要素はまったくない。
ちなみにセスキは外見は美女だが、雄株である。学芸員はそれを知らない。
なお、セスキの妻のペダレは懐妊中のため自宅で待機している。
また領民の若い娘三人が、作業を手伝っている。領主の山田に女性としての魅力をアピール
すべく、「悩殺のマイクロビキニ」、「貝殻の胸当て&貝殻の下腹当て」、「危ない水着・危険度LV76」
を着用している。それぞれオークに似た娘、ゴブリンに似た娘、ミノタウロスに似た娘の
装備である。彼女達の固有スキルによって、これらの装備には状態異常への抵抗力が低い
者に対する石化、混乱、麻痺などの付属効果が発生する。
次回「その11」 遠くの林の中では魔道士のローブを着た男が、独自に魔素収集の魔法陣を組んでいる。
傍らで銀色の髪の一糸まとわぬ美女と、同じく幼女が魔素を吸収しながら虹色の燐光を放っている。
雨が嫌いな猫娘は作業に参加せずに領館で待機している。山田の寝台に勝手に入り込んで、
高級寝台は寝心地が良いニャ、と言いながら丸くなって寝ている。
ちなみに語尾にニャをつけるのは、召喚士がそのほうがウケが良いと指導したためである。
抜け毛が敷布について掃除が大変そうである。あとでメイドのミヤゲ嬢が怒ることであろう。
猫娘の水着姿をどうして出さぬのだ!とお怒りのケモナーの方は、代わりに名作漫画
「ダ○ジョン飯」のイヅツミ嬢の画像を検索し、お着換え場面を探し出して萌えていただきたい。
こうして準備が整い、いよいよ実験が開始された。補助魔法陣が順次作動し、中央魔法陣への
魔素転送が開始された。中央魔法陣に設置された種子の容器に魔素が集積し、虹色の光芒を
放ちはじめた。時折り小さく火花が散る。
「封印呪の中和開始。進行率5割・・8割・・9割・・9割7分・・9分。術式停止!」
絶妙なタイミングで錬金術師が中和術式の停止を指示し、作業は終了した。
「魔力探知、鑑定設定にて展開・・封印消失を確認。成功しました!」
皆の歓声があがる。今夜は参加者一同で成功を祝って宴席である。
タイフーの風雨の中にもかかわらず、明るい笑い声がひびくのだった。
そして、彼らは種子が厳重に封印されていた理由を知ることになる。
次回「その12」 <幕間>
宴席のあと、女性陣は寝間着に着替えてガールズトークの時間である。
ここで誰の寝間着が一番かわいいか、描写が入る。
・・はずだったが、勘の良い召喚士は気付いた。
宇宙植物娘の姿が見えない。
召喚士のスクミズを抑えて人気第一位を奪った彼女である。
きっとまた何かやらかすに違いない。
おそらく普通の寝間着ではなく、素肌の上に山田の男物ワイシャツを着て現れたりするのだ。
という予想の斜め上を行き、彼女はナナの女児用キャミソールを素肌にまとって現れた。
サイズがまったく合っていないため、あちこちがピチピチで身体的特徴が強調されている。
裾丈も合っておらず、大腿部がほとんど全部露出している。
召喚士はつぶやいた。「こやつ、すべてが無自覚なのか・・むう、勝てる気がせぬ・・」 封印を解かれた二粒の種子は、王立植物園と山田領で一粒ずつ培養されることになった。
植物美少女が生えてくるのか?という予想を裏切り、滅菌用土に埋めた種子から発芽
してきたのは、赤紫色で剛毛の生えた、うねうねと動く奇怪な植物魔物だった。栽培条件
は不明だったが、発見場所からみて水生植物ではないか、との推測により、鉢に移植して
腰水栽培が試みられた。
翌朝になると鉢土に引き抜かれたような穴が空いており、植物本体が見当たらなくなって
いた。あわてて探してみたところ、温室内の温水池に浮かんで浮葉を伸ばし、時々小魚を
捕食していた。どうやら浮葉性・水生植物系の魔物らしい。とりあえず「ハス」と仮称しておき、
そのまま温水池で育てられることになった。この情報は植物園にも伝えられ、もう一株も
植物園の温室池で育成が開始された。
さて、育ててみるとこの「ハス」は意外と曲者であった。山田がさわろうとすると水中に
潜ってしまい出てこない。餌でおびきよせようとすると、いきなり水を吹いて餌だけ叩き
落とし、ツルを伸ばして奪い取る。
温室内に入ってきた家臣に溶血毒をもった棘を刺してきたり、麻痺毒を霧状にして温室内に
ただよわせたり、どれをとっても有害魔獣としか言いようのない行動であった。
家臣達は嫌がって温室に近寄らなくなったが、山田は辛抱強く世話を続けた。魔獣は危険な
存在だが、危険であるほど魔獣遣い(テイマー)にとっては有用でもある。いずれにしても、
まずは使役者のほうが格上の存在だと対戦して知らしめねばならない。魔獣が大きく育って
しまうと山田の戦闘力では屈服させられなくなる可能性があったので、幼植物のうちに
調教しておく事にした。
例の雨中服はレベル1の毒棘や毒霧ならほぼ完全に防護できたので、それを装備した山田が
みずから水中に入り、「ハス」と格闘して倒した。まあ、幼児とケンカして勝ったようなもの
なのであまり自慢にはならない。
次回「その13」 「ハス」が屈服したところで餌を与えて懐柔し、ご主人様に従うとご褒美がもらえるという
教育をほどこし、専門的な調教を続けた。こうして「ハス」は山田の忠実な使役植物となり、
与えられた死肉を消化液で溶かして吸収して急激に生長していった。そして最終的に、
全体に無数の毒棘を持つ、巨大な赤黒い植物魔物へと変貌した。
地球の植物で言うなら、蓮ではなく鬼蓮という感じである。そこで山田は、このジョーモン
時代から甦った古代植物を「オーガ蓮」と名付けることにした。
さて一方で、植物園で育てられていたもう一株のほうは、だいぶ異なる状況になっていた。
動いて毒棘を刺してくる植物に好んで近づく栽培担当者はおらず、調教されないまま勝手に
生長を続けていた。不幸だったのは王立植物園の学芸員達は植物学者であり、植物の栽培知識が
乏しかった事である。そう言うと、植物学者なのに栽培に詳しくないのか?と不思議に
思われる方がおられるかもしれない。だが、それは珍しくない話なのだ。
植物の栽培愛好会に、植物に関する優れた学術論文を書く会員がいたとしよう。彼の業績は
会の仲間から称賛されることはない。なぜならば、愛好会は植物をどうやって育てるか
考える会であり、研究論文を書く能力は評価の対象ではない。会長をはじめとする全会員が
論文を書いた経験がなく、会員が論文を書いても、それを読んで内容が優れているか
どうかを評価できる者は一人もいない。
次回「その14」 学者の世界ではこれが逆になる。論文を書ける者が偉く、植物の栽培能力は評価の対象
にならない。鉢植えを見て、栽培技術の巧拙を見ぬくような達人はいない。
そのため植物園のように栽培が重要な業務の施設であっても、「普通の」学者しかいない
場合には、施設の栽培技術を高めるという発想がない。
時には研究材料になりそうな植物のコレクションを増やすことだけ一生懸命で、実際の
栽培はアルバイトに丸投げしていたりもする。さらにひどくなると収容する植物すら
造園業者に一任して、栽培現場をまともに見ていない。というか見ても栽培内容を解析
できるほどの知識がないので、現場が工夫しても手抜きをしても違いがわからない。
そういう状況にならぬよう責任者が施設の方向性に修正を加えていけば良いのだが、園長も
学者で、栽培技術に対する認識が欠落していたりする。まして文系の公務員が責任者に
なったりすれば生物自体に興味が無く、管理書類の数字しか見ようとしない。地植えで勝手に
殖えた植物も、名人芸で殖やした植物も書類上では違いが無いので、栽培に時間や手間暇を
かけた者は経費を無駄にした、仕事の効率を悪くしていると責められ、現場から去っていく事になる。
次回「その15」 猫娘ならイヅツミ嬢より転生したら剣でしたのフランちゃんの方が好みだ
http://denshi-birz.com/tenken/ 誰も愛してくれる者のいない施設で、ネグレクトされて育った植物が問題をおこしたとしても
意外性は無いが、今回の場合は問題が大きかった。オーガ蓮から毒霧を吹き付けられ、怒った
アルバイト員が草刈り魔道具で切りかかったところ、オーガ蓮は彼を毒蔓でめった打ちにして、
全力で遠くに放り投げた。温室のガラスをつきやぶった彼の体は屋外庭園に投げ出され、
ぐしゃりと潰れて中身が四散した。
駆けつけた警備騎士達はアルバイト員の体を拾い集めて蘇生所に搬送する一方で、オーガ蓮
を討伐しようとした。ところがオーガ蓮の草体は切りつけた剣をすさまじい弾力ではじき返し、
騎士が逆に傷を負った。さらに魔法攻撃もカウンター反射され、睡眠ポーションや麻痺
ポーションも効かなかった。
相手が物理攻撃反射、魔法反射、状態異常無効の裏ボス級モンスターであると気付いた
時には、警備騎士達はすでに全員が戦闘不能となっていた。
じつはオーガ蓮は、かつて古代エルフが冥王と戦わせるために、生物工学によって作り上げた
無敵の生物兵器だったのである。
攻撃されて怒りに燃えたオーガ蓮は、何本もの毒蔓を振り回して温室を粉砕すると、王城
の方向を目指してゆっくりと動きはじめた。
だが、その前に一人の男が立ちふさがった。
「精霊王から正体を聞いて、様子を見に来たのは正解だったな・・まずは暴れるのを止めようか。
無敵の生物兵器が、お前だけだと思ったら大間違いだぞ。 いでよわがしもべ、召喚獣オーガ蓮1号!」
山田の前に出現した光輝く魔法陣の中から、赤黒い巨大な植物魔物が地響きをたてながら出現した。 「山田よ。我の魔力で召喚した魔物なのに、おぬしが呼び出したような言い方だな」
「いやぁ、一度言ってみたかったんで。行くぞ1号!」
大地を揺るがす激しい戦いが始まったが、園芸と無関係な部分なので省略させていただく。
どこかで園芸と関係ない流れもあったように感じるが、おそらく気のせいである。
こうして最終的に調伏された植物園のオーガ蓮は、山田領に引き取られて調教される
ことになった。「植物園でうまく育てられなかった魔物を、上手に育てている山田様は凄い」
という評判が立ったが、それに対して山田は言った。
「オーガ蓮は『世話をして育てる』」タイプでしたから・・。もしも、『環境で育つ』植物
だったなら、環境が不安定な個人栽培場よりも、むしろ植物園で暮らすほうが良かったはずです。
たまたまあの子達ーーオーガ蓮には、山田領の育て方のほうが合っていただけなのです。
環境で勝手に育っている植物を、栽培していると勘違いすれば、栽培技術は腐ります。
栽培技術がすべてを解決すると過信すれば、環境という壁にぶつかって倒れます。
植物園でしか育てられぬ植物もあれば、個人の技術がないと殖やせぬ植物もある。
そして、その両輪を結びつける車軸があれば、栽培の世界はさらに先に進む力を
得るはずです。私は皆でその車軸を作って、『その先』に行ってみたいのです。」
その後、2株のオーガ蓮は個体名をサンダーとガイラーと名付けられ、山田領の魔物闘技場に
おいて、無敵の双王者として長く君臨した。その戦いぶりは観光客におおいに評判になったという。
(了) 水着から寝間着と流れるままかと思ったらちゃんと園芸で終わってた
サンダー、ガイラー、闘技場に心当たりあってフイタわw 毎回うまいね 山田シリーズの一遍を考えてみたが
途中まで書いて出来が微妙なので投稿保留中
3行ギャグなら勢いだけで誤魔化せるが
プロットに肉付けすると文才の無さが響いてくるわ
3行以内なら
カンカンカンカンキンキンキンキン(打撃音)
な、なんという強さだ凄いですお兄様そして世界は救われたハーレムEND
って描写でも許される(違 植物の種を何か一種類だけ携えて転生するとしたら何持っていく? >>237
薬用植物か果樹の種かな
葉物野菜は人間がいる世界なら現地のものがあるだろうし日常的に多用する(大量生産が前提)ものなので
貴族や大地主の息子にでも転生して広い土地がないと詰みそう
鑑賞目的にしか使えない植物は社会が一定以上豊かで文化的でないとそもそも需要がないだろうし
実用性があってかつ少量しか生産しなくても十分な利益が得られる植物が望ましい
というわけで自分はブドウ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています