少し離れた場所にある主力補助魔法陣では、召喚士が術式の副監督として待機している。
彼女の防護服は、かつて異世界から召喚された初代勇者が、冥王との戦いに挑む際に
愛する少女を守るために作り上げたと伝えられる伝説の防具である。異世界の言葉で
スクミズと呼ばれる紺色の防護服は、胴体のみを覆う形状であるが、魔法付与によって
全身の防御力を著しく高める効力がある。召喚士に装備可能な防具としては、「精霊の羽衣」
と並んで最強クラスの装備である。さらに、特定の属性を持つ者は、着用者の姿を見た
だけで「魅了(チャーム)」の魔法がかかるという特殊効果も付与されている。

しかも召喚士は独自に凶悪な改造を加えており、魅了された者が、装備者の名前を
聞いただけで下僕と化すような視覚的符術を防護服に施している。すなわち、自分の
名前を白くて四角い術符に書き記し、胸に張り付けてある。
これによって特定属性の者に対する魅了効果は飛躍的に高まっている。

この防護服は伸縮率に富み、膨らみかけとも言うべき身体的特徴を隠すことなく表出
させている。彼女はこの特徴を無駄の無い機能美と考えており、他者の無駄な脂肪を
憐れんですらいる。この思想が男性視点の社会において、どの程度の割合で共有されうる
かについては調査する必要がある。

次回「その6」