この世界には転移門や飛空船を利用した高速移送技術が存在していたが、
コストの点からそれらの利用は兵站の輸送などの大量物流に限定されていた。

通常の物流には個人商人の魔動車輸送か、運送ギルドの配達人による配送が
利用されていた。しかし一般的なアイテムボックスは生物の収納ができないため
輸送できる農産物は精白された穀類、乾燥させた芋や果実などに限定されていた。
仮に鉢植えにして運んだとしても長期輸送による風味の減退は著明であり、
領外への生鮮野菜の輸送はほぼ皆無であった。

だが誰もやっていないということは、手付かずのブルーオーシャンが広がっていると
いうことでもある。現代日本の物流システムを知る山田には、一つのアイデアが浮かんだ。
しかしそれを実現するためには、さまざまな法律的、神学的な規制をクリアする
必要があった。

次回「起業準備その2」
続く。