>第一、音読している間は文章の意味が頭に入らない。

音読の意味はまさにここにある。音読しながらでも頭に入るようにすると会話能力
は急激に上がる。
 最近ではたとえば一流のスキーヤーはお手玉をしながら滑るというような練習を
する。あるいはお手玉をしながらサッカーをするというようなことも積極的に
練習に取り入れられている。同時平行して二つのことをやるのは非常にむつかしい。
しかしこれができるようになると、素早い身体コントロールと同時に的確な状況判断が
できるようになる。

 頭にインプットした原稿を喋りながら、会場の観察をしてユーモアのチャンスを
探したりと別の思考を同時並行して進める。
こういうパラレルな思考ができないと話者としては一流になれない。

 話芸の起こりは坊主から出ている。辻説法をしたり季節ごとの法要では檀家に説教
をしたりと昔の坊主は本当に話術に秀でていた。これは何故かというともちろん必要
に迫られてということもあるが、基本はお経の音読だ。お経はまったく意味がない
ので覚えるのが大変だ。馬鹿らしくて覚える気もしない。しかし何とか覚えてしまう
とあとはスラスラと唱えることができる。それだけではなくてお経を唱えながら、色
んなことを考えたりもできるようになる。 つまりパラレル思考の基本的なことが
ができるようになる。これが話術に限らず技を磨くうえで非常に重要なのだ。