俺はかつて結婚していたが、独身でいられる人は独身でいた方がはるかに賢明な
生き方だと思う。結婚は、一種の詐欺だと言ってもいい。どっちがどっちを
騙しているのかは人それぞれだし、何とも言えないかもしれず、あるいは
両方が互いにだましているのだろうが、いずれにしてもろくなことはない。

子供だって、無理矢理に馬鹿親から生み出され、豚小屋のごときこの世に
引きずり降ろされて、80年も90年ものあいだ、何のために何をしているかも
さっぱりわからないまま、闇の中を手探りで生きなければならぬ。
ふと気づくと人生の秋を迎え、自分の人生も人類の歴史も宇宙全体も
すべては虚妄であったことに気づく。いや、そのことは実は20歳前後の
ころにすでに気づいていたのだが、それでもやはり生きなければならないという
強迫観念に突き動かされて生きるのだ。

さらに、所得は多い方がいいというのも、これまた詐欺的な盲信だよな。
たくさん稼がないといけないという強迫観念にとらわれた俺は、
かつてはたくさん稼いでいたが、そういう生き方も実にくだらない。
詐欺的な商業主義に翻弄されて有害なものをこの世にどんどん生み出すことは、
むしろ罪悪だと言っていい。