まあ、どっちにしろ、意富はオホの発音や。
この意富の字が当てられた元の口語はオホ(大)で、そのままオホキミ(大王)の言葉の一部になる発音やな。
このオホキミはそのまま変わらずに奈良時代まで続き、万葉集では於保伎美と書かれている。
この万葉集の保(ホ)は、富(ホ)と同じ発音に分類されている。

ところが、この富は呉音ではフ、漢音ではフウの発音とされるものだ。
富のフ音は、現代中国語の官話から広東語に至るまで、少しも変わらずフ(hu)音が続いている。
では、その富のホ音はどこから来たのか。
現代のビンドン語に唯一その音が見られるのだ。
意富の字をオホの口語発音に当てたのは5世紀後半のことであるが、その時から現代に至るまで少しも変わらずに伝えられていると考えることができる。

そして、富をフと発音している福建省などのビンナン語においても、福建はホッケン、台湾語を指す福佬語もホーロー語と発音され、hu(フ)音がho(ホ)音に変化する例がみられる。
5世紀後半に富の字をホと発音した鍛冶職人は、ビンドン地方出身だった可能性が高いと言えるだろう。
つまり、ホ音はずっと昔から日本に存在していたということだな。