ラテン語で副詞的に「今年は」という場合、hoc anno でも in hoc anno でもどちらでも良い。
強いて言えば、前者は古代ラテン語的、後者は後代ラテン語的である。
特に口語(俗語)においては、その明晰さ故に前置詞が頻用される傾向にあった。

とは言え、前者の方の言い回しは、中世に入っても口語的にもまだまだよく用いられていたと見え、現代スペイン語ですら普通 este año と言い、これを en este año とすることは慣用的でないと言える場合も少なくない。
例えば
Este año voy a pasar la Navidad con mi novia.
のような文では、これを En este año 〜 とはあまりしない。

のみならずスペイン語には hogaño「今年」という副詞も有るが、これは正に先の hoc anno がスペイン語に引き継がれた形である。
(ラテン語の c[k] が母音に挟まれる位置で有声化してg になるのは、スペイン語における規則的な音韻変化)

ところで、これに関して吾人が思い出すのは、学校で英語の授業が始まったついでに、独学でスペイン語を学び始めた中学生の頃のことである。
先の西語文は
This year I'm going to spend the Christmas time with my girlfriend.
とでも英訳することができる。
吾人がその当時考えたのは、this year も este año も、このままではむしろ主格的に見えてしまうのだから、やはり前置詞 in/en を取った方が良いのではないかということであった。

このような前置詞無しでも副詞的に使われる用法について、いくらか理解できるようになったのは、ラテン語を学び始めたからであった。