2015/3/6
発掘30年、謎呼ぶ貴人(時の回廊)
藤ノ木古墳出土品の特別陳列 奈良県橿原市
http://www.nikkei.com/article/DGXLASHC27H3P_X20C15A2AA1P00/
 未盗掘のまま残っていた奈良県斑鳩町の藤ノ木古墳(6世紀後半)が発掘され、古代史ブームが巻き起こって今年で30年がたつ。
普段は目にする機会が少ない出土品の数々を紹介する特別陳列を同県立橿原考古学研究所付属博物館が22日まで開催している。

■「格」の判断問題に
 この時期は前方後円墳が終焉(しゅうえん)を迎えつつある一方、方墳や円墳など様々な墳形が築造され、何を物差しに古墳の「格」を
判断するかが問題となる。小栗さんは前方後円墳なら後円部の径、円墳や方墳なら直径や1辺の長さを物差しに使い、大王(天皇)墓から
地域の有力者の墓まで、古墳を4つのランクに分類した。
 それによると藤ノ木古墳は出土品の豪華さこそ目を引くものの、ランクは上から2つ目。「格の高い皇族クラスの墓で、同じランクの古墳は
他に幾つもある。藤ノ木と同等の品が副葬されていた可能性が高い」と小栗さんは話す。
 では藤ノ木古墳の主は誰か。埋葬状況から同時に2人が葬られたとみられるが、比較的形をとどめていた北側の被葬者の骨に対し、
南側は足骨などしか残っていなかった。
 人骨鑑定の結果は「2遺体とも男性」。聖徳太子の叔父で、蘇我氏と対立して殺された穴穂部皇子(あなほべのみこ)と宅部皇子(やかべのみこ)
との説が有力視されている。古墳にまつわる伝承から1人は崇峻(すしゅん)天皇との見方などもある。
 ただ南側の被葬者については、手玉や足玉を身につけていたことが議論を呼んでいる。奈良芸術短期大の玉城一枝非常勤講師は
人物埴輪(はにわ)を手掛かりに「これらは女性の装身具」と指摘。鑑定結果に疑問を呈し「性別不明を出発点に、女性の可能性も検討すべきだ。
DNA鑑定してはどうか」と訴える。
 これに対し前園教授は「他の副葬品などを総合的に判断すれば男性」と主張。大阪府立近つ飛鳥博物館の白石太一郎館長は
「何かの刑罰として女装して葬られた可能性なども考えられる」と話す。