第14連隊の連隊旗を薩軍に奪われた問題に関しては、発見者である高田露(あきら)、河原林雄太少尉に軍旗の扱いを命じた乃木少佐、河原林少尉を切り殺した薩軍の岩切正九郎押五の三者の証言が食い違っている。
司馬は、高田露の証言が正しいとしている。
乃木は命令を下したのみで、河原林少尉の命令後の行動は知らない。
しかし、おそらく嘘をついている。この嘘が乃木の心痛の種であり、乃木を殉死に追い込んだ動機のひとつであろうかと思われる。
岩切正九郎の証言は、収監中に政府が圧力をかけて偽証させたものであろう。