>「吾作明竟真大好,(仙人)浮由天下,敖四海,(刑暮周刻)用青同,(君?高官)至海東。」

1、吾作明竟【君】真大好 浮由【官】天下 ■四海【高】 用青同 至海東【宜】
「私は明鏡を作る。まことに良い品である。天下を浮遊し四海に遊ぶ。青銅を用いる。海東に至る。」(「君宜高官」と逆回転の四文字が入っている)

 最初に作者の自負をのべ、次いで鏡のことを語っています。荘子、斉物論篇に、
「至人は神である。…かくのごとき者は雲気に乗り、日月に騎して四海の外に遊び…」と
いう言葉がありますから、「浮遊天下、敖四海」は、鏡に描かれた神仙の能力を表すと
考えられます。鏡の原料には青銅を用い、鏡は海東に至るのです。
 朝鮮半島に三角縁神獣鏡は見当たらないといいますし、倭は越(会稽、東冶)の東に位置すると
考えられていましたから、海東という表現に疑問の余地はありません。日本を考えるのみです。
中国の歴史家、王仲殊氏は、日本に移住した中国、呉の鏡師が三角縁神獣鏡を作ったのだと
唱えています。しかし、この銘文では、海東に至るのは鏡と解するしかありません。
「浮遊天下、敖四海」の後に、「至海東、用青銅」と続いているなら、吾が天下を浮遊し四海に
遊んだ後、海東に至り、青銅を用いて鏡を作ったという解釈も可能になりますが、吾が青銅を
用いて鏡を作ってから、海東に至るという順序です。海東の倭では、この鏡を作れない矛盾が
あります。いずれにせよ、用青銅、至海東の主語は、吾ではなく、明鏡です。