西郷隆盛の庄内藩に対する温情伝説か・・・

「東北戦争に関して、西郷の伝記中、省いてはならぬ一佳話がある。
それは、かの庄内藩が、降伏を勧められても容易に応じず、
激戦数合の後、力尽き矢折れて、遂に降伏の議を決し、藩主自ら
隆盛の陣営に来ることとなった。
隆盛は出でてこれに引見し、さながら賓客の礼を以てこれを遇し、
極めて寛大な条件の下にその降伏を容れ、直ちに令を下して
兵を徹せしめた。
当時、隆盛に随行しておった高島鞆乃助は、使者の帰つた後、
『先生、今の応対は、余りにご謙譲に過ぎて、どちらが降伏するのやら
分からんようでありましたな』と問うた。
すると隆盛は、心地よげに破顔微笑して、『戦に負けて降伏するのである。
官軍に対しては、それでなくても非常に怖れを抱いておる。彼の慇懃な様を見い。
それに対してこちらが声を張り上げでもしたら、あちらはその思う所を
吐くことさえ出来まいではないか』と言った」
『大西郷全集』(1925年)

ここから庄内藩と西郷隆盛の心のこもった交誼が始まった
という伝説が生まれた