0177法の下の名無し
2018/09/09(日) 12:37:02.70ID:fnXlqf9k1.そもそも無期懲役と終身刑は同じ概念
無期懲役は、実際の運用はともかく、概念としては終身刑とは異なると思っている人が圧倒的に多数だと思う。
無期懲役と終身刑が異なることを前提に、「日本には終身刑がない」という前提でいろいろ議論がなされるのが常だ。
しかし、この前提は誤りだ。無期懲役と終身刑は同じもので、ただ呼び方が異なるだけだから。
無期懲役というと、その語感からか、「単に期間が定まっていない刑罰」を意味すると思う人が多いようだが、そうではない。
期間が定まっていないのではなくて、懲役刑の終わりが「ない」のが日本の無期懲役だ。刑期に終わりがないから、刑が一生終わらないことは確定している。
刑が終わることは生涯ない以上、外界に出られるとしたら「仮釈放」しかない。
仮釈放は、「仮」の文字どおり暫定的な処分だ。いったん外には出してもらえるが、受刑中であることには変わりがない。
仮釈放中に、比較的軽い罪でも再犯をしたり、遵守事項違反をしたりすると、国は仮釈放を取り消して受刑者を再び収監することができる。
有期懲役にも仮釈放制度はあって、概ね刑期の8割を過ぎた頃から、服役中の行状などによっては仮釈放される人が出てくる。
有期懲役の場合は満期があるから、仮釈放された後につつがなく満期が到来すれば、晴れて自由の身だ。
しかし無期懲役だと満期はないので、一生涯「仮釈放中の無期懲役囚」の身分が続くことになる。
ところで、仮釈放制度の有無を問わず、このように刑の終期がない懲役刑のことを、終身刑と呼んでいる。無期懲役とも呼ぶ。
このように、無期懲役と終身刑は同じことだ。
そのため、「無期懲役」の英訳は「life imprisonment」であり、これは「終身刑」という意味だ。*1
ところで、無期懲役=終身刑は、制度上、仮釈放の可能性があるものとないものに分かれる。
世界的に見ると仮釈放制度のある終身刑を採用している国が比較的多いようだが、仮釈放制度のない終身刑を採用している国も存在する。
日本においてマスコミをはじめとする多くの人が「無期懲役」と異なる概念と思い込んで用いている「終身刑」の語は、「仮釈放のない終身刑」を指しているわけだ。
無期懲役と終身刑を別の概念と捉えるのは本来は誤りだが、ひとまず
日本語の「終身刑」はたいていの場合「仮釈放のない終身刑」だけを指して用いられること
海外の犯罪報道などで「終身刑」と言われる場合、「仮釈放のない終身刑」の意味で用いられているとは限らず、むしろ日本の無期懲役にあたる制度である場合が多いこと
を押さえておけばよいだろう。*2
2.無期懲役囚が仮釈放で出るのは困難
上記のとおり無期懲役と終身刑は同じものだ。
しかし、冒頭の被告人が「無期懲役は実質終身刑」と言ったのは、そういう意味ではないだろう。
「仮釈放は実際上困難だから、日本の無期懲役は実質仮釈放のない終身刑に近い」と言いたかったのだろう。
実際、法務省が公開しているデータを見ても、無期懲役囚が仮釈放されるのはなかなか困難だ。いったん無期懲役になったら死ぬまで出られない可能性が高い。
この点、「無期懲役といっても15年〜20年で出られる」といった認識を持っている人が多いようだが、明らかに誤っているので注意。*3*4
法務省の公開データを見ると、
H23〜27年の5年間に仮釈放許可を得た囚人の平均在所期間は、いずれの年も30年以上。H18年〜H27年の平均は31.2年。
H23年〜27年の新規仮釈放者数と獄死者数を足したものを分母とし、これに占める新規仮釈放者の割合を求めると、32/126で25.4%。
平成23年〜27年の5年間で仮釈放申請は計129件あるが、うち仮釈放が許可されたのは33件で25.6%。なお、仮釈放申請自体、在所期間30年以上の人が9割以上を占める。
このように、「15〜20年で出られる」どころか、「30年経っても出られない可能性の方が高い」「一生出られず獄死する可能性が高い」のが日本の無期懲役の運用だということが読み取れる。