わが国の近代憲法は,1889年の大日本帝国憲法(明治憲法)から始まる。大日本帝国
憲法という表現と明治憲法という表現は異なるが,この背後には思想の違いがあるか
らである。それは,おいおい分かっていくものと思われる。

「立憲的」という言葉は価値の込められた概念であることに留意するべきである。
立憲主義というのは,国民の権利自由を保障するために専断的な権力を制限して,
憲法に立脚して政治がおこなわれる原理 のことである。

立憲主義は近代になって成立した。ロックやルソ一によって説かれた近代自然法
ないし自然権の思想は,近代市民革命を思想的に支え,アメリカ 合衆国憲法(1788年),フランス人権宣言(1789年),フランス第一共和制憲法(1791年)に結実して
いった。その時代背景から,立憲的意味の憲法は近代的意味の憲法とも呼ばれている。

大日本帝国憲法は,「万世一系の天皇」が統治する(1条)という規定があるなど
君主制の色彩が濃い憲法であったが,紛れもなく立憲的意味の憲法である。