平安の御代のことばこそいとどうるはしけれ。おほやまとは神の國にて、
ことだまさきふはふ國なり。さるに、今の人はふみにからことばをあまたまじへて、
才ありげにしたり顔すめる、あさましうなむ。ただ一つ二つ用ゐるばかり
ならば、さもあらぬを、「移る」、「終る」などと言ふべきところをわざと
「移動す」、「終了す」などと要らぬからことばをまじふるは、益なうて、
げに愚かなり。