私は「旺文社第九版」「岩波補訂版」「ベネッセ全訳初版」「三省堂全訳読解初版」の4冊を使ってる
上代語で「たづたづし(たどたどし)」って形容詞があるんだが、この4冊で引いて紹介すると、
〇旺文社 @(主観的に)おぼつかない。確かでない。あぶなっかしい。不案内だ。
     A(客観的に)はっきりしない。ぼんやりしている。
〇岩波 @いかにも不案内である。進もうにも状況がよく分からない。
    A不確かである。
    Bぼんやりして、様子がよく見えない。
〇ベネッセ @不確かだ。未熟だ。
      A辺りのようすや物音などがはっきりしない。ぼんやりしている。
      Bはかどらない。
〇三省堂 @おぼつかない。未熟である。
     Aはっきりしない。ぼんやりしている。
という訳語を出している。
さらに一歩ふみこんで、この「たどたどし」の語感としてこの4冊は、
〇旺文社 行き先も分からず迷っているので、見ていてじれったく、救いの手をさしのべたくなる感じ。
〇岩波 夕闇の中を手さぐりで行くような気持ちをいう
〇ベネッセ 説明なし
〇三省堂 【読解のために】「たどたどし」の古形「たづたづし」は、万葉集では、たとえば「夕闇は道たづたづし月待ちていませ我
が背子その間にも見む」(万葉・四・709)(訳・(月の出る前の)宵闇の道はあぶなっかしいですから、あなた、月が出るのを待っ
てお帰りになってください。その間だけでも、私はこのままあなたにお会いしていましょう)と女心を歌っている。「たどたどし」は
、このように夕闇の中を手さぐりで行くような、はっきりしないあぶなっかしい心持ちを本義とする。
と説明している。
旺文社の説明はちょっと違うかなあという感じ、岩波と三省堂全訳読解はほぼ同じでたぶんこの語感なのだろう。
それにしても全訳にもかかわらず三省堂のこの辞書はすばらしいね。趣味で読むならまず入口としてこの三省堂全訳読解がイチ押し。
受験生は辞書にこんなことまで求めないだろうから、とことん高校生を意識した編集方針のベネッセ全訳がいいだろう。
岩波新大系や小学館新編全集などまでステップアップした人なら、岩波補訂版を購入するといい。