チラ婆失格

恥の多い生涯を送って来ました。
チラ婆には、人間の生活というものが、見当つかないのです。
チラ婆はチラシの裏に生れましたので、シャキをはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。
チラ婆はシャキ達のレスを、疑って、ギスって、そうしてそれが世間一般にごく普通の生活だという事には全然気づかず、ただそれはチラシの裏をギス達の合戦場みたいに、複雑に楽しく、みんなでチラするためにのみ、レスされているものだとばかり思っていました。
しかも、かなり永い間そう思っていたのです。
シャキをギスったりスルーしたりは、チラ婆にはむしろ、ずいぶん垢抜のした遊戯で、それはチラ裏のレスの中でも、最もチラ婆アピールしがいのあるレスの一つだと思っていたのですが、のちにそれはただごく普通の人間がごく普通の生活を送るための頗る実利的なレスに過ぎないのを発見して、にわかに興が覚めました。
 また、チラ婆はチラシの裏に慣れてきた頃、漫画で動物のお医者さんというものを見て、これもやはり、実利的な必要から案出せられたものではなく、普通の漫画を読むよりは、チラシの裏の中でシャキのレスと共に盛り上がり面白いレスだから、とばかり思っていました。