興行収入を見守るスレ5656
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このスレは映画が日本で売れたか売れないか、だけ
作品、人等について語りたい方は関連スレで。実況は実況板で。
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煽り目的の表や同じコピペを繰り返すのはスレの容量を重くする荒らしです。スルー推奨
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海外興行収入、円盤売上は原則禁止。
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>>900を踏んだ人が宣言した上で、>>950までに次スレを立てること、無理な場合は速やかに他の人に頼むこと
>>950を超えて次スレが立たないなら速やかに減速する
スレの流れが速い場合は、確実に立てられる人間が宣言をして900以前にスレ立てをしても可
関連リンク
・MovieWalker(月) http://movie.walkerplus.com/ranking/japan/
・興行通信社(月) http://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/
・eiga.com(月) http://eiga.com/ranking/jp
・MOJO http://www.boxofficemojo.com/intl/japan/
・THR.com http://www.hollywoodreporter.com/topic/asia-movies-film-reviews
・THE NUMBERS http://www.the-numbers.com
・文化通信速報 http://www.bunkatsushin.com/news/list.aspx?nc=1
・社団法人日本映画製作者連盟 http://www.eiren.org/toukei/index.html
・週間動員ランキング http://www.kogyotsushin.com/archives/weekly/
・Korean Film Council https://www.kobis.or.kr/
※前スレ
興行収入を見守るスレ5655
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662686800/
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvvvvv:1000:512:: EXT was configured 「ちっが~うっ。あたいはね、ここで料理のお手伝いしてんの!」
忍装束に身を包んだ女が、腰に両手を当てている。
「わっはははっ~」と、急に女は、腰に両手を当てたまま高笑いする。
「なにわらっとんじゃ! お手伝いがそげな恰好するんか!?」
オラは訳もわからず頭にきて、栞から手を離す。
怪しい忍装束に身を包んだ女に大股で歩み寄る。
「これはくノ一! 昼は店のお手伝い。夜はくノ一。なぁ~んてねっ」
忍装束に身を包んだ女が、オラの頭を撫でて、ピースしてウインクする。ll
「なんじゃ、取ってつけたように。お前なんか可愛くないわい!」
オラが両手を組んで、鼻で笑ってそっぽを向く。 「なによ! これでも、あたいはくノ一の隊長なんだからね!」
忍装束に身を包んだ女が、腰に手を当てて、オラの胸を小突く。
「お前は、下っ端でええじゃろが!」
オラは、忍装束に身を包んだ女に舌を出す。
「いっちょやったろうじゃないの!」
忍装束に身を包んだ女が、オラを睨み付ける。
勝ち誇ったように腕を組んで、不気味な笑みを浮かべている。
「望むところじゃ! できそこないのくノ一め。覚悟せえよ!」
オラも負けじと、忍装束に身を包んだ女を睨み付ける。
拳を突きつけ、歯をむき出す。 二人の視線が熱くぶつかりあい、火花が散っている。
「騒がしいから来てみたら、なにやってるんだい。梓」
八重が暖簾から現れた。
八重が持っているお盆の上には、饅頭が盛られた皿と、急須、熱いお茶が載っている。
八重は顔に手を当てて呆れ顔をして、お盆をテーブルの上に載せる。
「うちの客でね。都で甘味処を営んでるおやっさんが持って来てくれたんだ。この饅頭」
八重が椅子に腰を下ろす。
頬杖をついて、饅頭を一つほうばる。
「わぁ。いただきます!」
栞が手を合わせて、両手でお行儀よく饅頭を口にほうばる。 「あ~! あたいが食べたかった饅頭!」
梓が、お盆の上に載った饅頭が盛られた皿を指さす。
思わず涎が出て、「いけねっ」と言って、涎を手で拭った。
「残念じゃのう。これは、オラの饅頭じゃけえ」
オラは勝ち誇ったように、テーブルに歩み寄る。
オラは梓が饅頭を食うなというように、梓に鬱陶しそうに手を振った。
オラも椅子に腰を下ろして、饅頭を口にほうばる。
「お姉ちゃん、あげる」
栞が饅頭を食べ終わり、皿から取った饅頭を半分こして、半分こにした饅頭を梓に差し出す。 「うわ~。ありがとうっ!」
梓が目を輝かせて、栞から饅頭を受け取る。
口にほうばって、饅頭を飲み込んだ後、栞に抱き付く。
咽ればよかったんじゃがのう。
この女め。
「お姉ちゃん。喉詰まる」
栞がお茶を飲んだ後、梓から放れて、隣の椅子に座る。
「ああ、ごめんごめん」
梓が照れたように、頭の後ろを掻いた。
梓が栞の隣の椅子に腰を下ろす。栞の頭を撫でた。
「この子。栞ちゃんってんだ。仲良くしてやっておくれ、梓」
八重が椅子から立ち上がって、栞の肩に手を置く。 「もっちろ~んっ。あんたの名前は知らなくていいからね!」
梓が栞に抱き付き、オラに舌を出す。
「こげな女はほっといて、オラは腹ごしらえじゃ。饅頭が不味くなるけえの」
オラは、饅頭をやけ食いした。
やっぱりオラは、「ごほっ。ごほっ」と、咽た。
慌てて、胸を叩いて、お茶を飲み干す。
お茶もよそに入って、咽てもうた。
「や~い。罰だ! ねぇ、栞ちゃんっ」
梓が栞の肩に両手を置いて、栞の頬に自分の頬を引っ付ける。
可笑しそうに、オラを指さして笑う。
「兄ちゃん。変なの」
栞も、饅頭に咽たオラが可笑しいのか小さく笑った。 「さて。あたしゃ、ご飯の支度でもしようかね」
オラたちのやり取りを見ていた八重が、栞に微笑んでから台所に向かう。
「八重さん。いいですよ、あたいがやりますから」
梓が立ち上がって、八重を制した。
「そうかい? じゃ、頼むよ。あたしゃ、この子たちと話したかったんだ」
八重が椅子に座って、頬杖をつく。
「孫でもできた気分ですかぁ? なぁんてねっ」
梓が鼻歌を歌いながら、台所で作業している。
包丁を切る軽快な音が聞こえる。
「そんなとこだよ。それより、また夜遅くまで仕事してたのかい?」
八重が頬杖をついたまま、梓を見つめる。 「ええ。なかなか、勘兵衛が尻尾を出さなくて。最近、勘兵衛の情報がないんですよ」
梓がガスコンロに移動して、鍋に火を点ける。
鍋の中に、桶に入っていた野菜を入れる。
「か、勘兵衛じゃと!?」
オラはテーブルを勢いよく叩いて、椅子から立ち上がった。
「わっ」
栞が驚いて、お茶を飲む手が止まる。
「……勘兵衛はね。あたしの夫だったんだ。神楽が生まれてすぐに、勘兵衛はあたしを捨てたけどね」
八重が頬杖をついて、寂しそうに天井を見つめている。 「!? ってことは、八重は龍之介の母ちゃんになるんか?」
八重から衝撃な話を聞かされ、オラは動揺していた。
変な汗を額に掻く。手にも汗を掻いている。
「そうなるね。あたしと別れた後、勘兵衛、また女を作ってね。龍之介は、その女の間に生まれた子さ」
八重が饅頭を口にほうばる。
「どうぞっ。八重さん」
梓が湯呑を持って来て、梓が湯呑にお茶を淹れてくれる。
「ありがとう」
八重が、気を遣ってくれた梓に目配せして、梓が淹れてくれたお茶を飲む。
梓が八重に微笑んで会釈して、梓は台所に戻って行く。
「ってことは、神楽と龍之介は、腹違いの姉弟ってことか?」
腕を組んで考え込んでいたオラは、テーブルから身を乗り出して、オラの向かいに座っている八重に訊いた。 「そうなるね。勘兵衛がおかしくなったのは、流行病で息子と妻を亡くしてからさ。あたしと出会う前の話になるね」
八重が肩を竦める。
八重が小さくため息を零す。
「あの勘兵衛に、そんなことがあったんか……」
オラは椅子に座り込んで、腕を組んで妙に感心した。
「あたしも昔は遊女でね。流行病で息子と妻を亡くした勘兵衛は、遊女と酒に溺れて、店に金を使うようになったんだ」
八重が頬杖をついて、寂しそうに窓の外の景色を見つめている。
「自業自得じゃろ」
オラは腕を組んでそっぽを向き、鼻で笑った。 「勘兵衛はあたしの客でね。一緒に暮らすようになってから、すぐに神楽が産まれたんだ」
八重が頬杖をついたまま、寂しそうに窓の外の景色を見つめている。
「八重さん。遊女の時は、綺麗だったんだよ?」
梓が、オラの肩に手を置く。
話に夢中で、梓の気配に気づかんかった。
こいつ。やっぱり、気配を消すところ、くノ一じゃな。
「余計なお世話だよ。昔の話さ」
八重が腕を組んで、深いため息を零す。
「でも、それからですよね? 勘兵衛が八重さんを捨ててから、勘兵衛が武器商人になったのは……」
梓がオラの肩に手を置いたまま。 梓の顔を見ると、表情が曇っていた。
この女も、辛い過去があるんじゃろな。
「ああ。今、極秘で新しい武器を研究してるらしいからね。勘兵衛のやつ」
八重がお茶を飲んで、一息つく。
「勘兵衛、龍之介を産んだ妻を平気で殺めたんだ。銃の試し撃ちとかで。それも、龍之介の目の前で」
梓が、震える声で話す。
オラの肩に置いている梓の手に力が込められる。
「眠いっ」
栞が大欠伸をして、目を擦った。
眠いのか、テーブルの上に突っ伏す。
腕の上に頬を載せて、静かに寝息をたてた。 「……栞ちゃんの前で、こげな話するもんやない。この子の将来のためにもな」
八重が栞の眠り顔を見て、栞に微笑む。
八重が優しく栞の頭を撫でた。
「ごめんね、栞ちゃん。こんな話して」
梓が、反省して栞を抱きしめた。
栞の着物に顔を埋めて、梓が泣いている。
「栞に、悪いことしたわい」
寝ている栞の寝顔を見ていたら、やるせない気持ちになった。
オラは俯く。膝の上に握り拳を作って。
オラは、栞を守らんといかんのじゃ。
せめて、栞の笑顔を守らんといけんのじゃ。
勘兵衛。どうして、変わってしもうたんじゃ。
お前はもう、人に戻れんのか? 「あたしゃ、栞を寝かせてくるけえ」
八重が栞をおんぶして、暖簾の奥に消えて行った。
しばらく、オラと梓の間に無言が続いた。
重い空気が流れている。
「……飯の支度はできたんか?」
オラは顔を上げて、梓に訊いた。
「わわっ! 鯛があったの、忘れてた!」
梓が涙を拭って、台所に向かう。
梓が台所の下に置いてある発砲スチロールの中から、大きな鯛を取り出す。
梓が、せっせと鯛を水道で洗っている。
「それにしても、神楽って、綺麗じゃのう」
オラは頬杖をついて、神楽を思い出した。
神楽の豊満な胸を妄想してしまう。 「ああ、確かに。神楽は、あたいの幼馴染さ。まあ、あたいは神楽みたいに胸がないんだけどね」
梓が、鯛の鱗を包丁で取っている。
「そうなんか。なあ、梓。勘兵衛を恨んでるんか?」
オラは頭の後ろで手を組んで、台所で鯛を捌いている梓に訊く。
「……あたいの両親は勘兵衛に殺された。行き場のないあたいを、八重さんが拾ってくれたんだ。今は、この店に住み込んで働いてる。仲間も勘兵衛に殺されたよ」
梓が俯く。 梓の包丁のスピードが明らかに落ちた。
梓の包丁の音が不快に聞こえる。
そんな気がする。
「勘兵衛を殺して、仲間と両親の仇を取るんか?」
オラは梓を鋭く見つめた。
「当たり前だろ。あたいは勘兵衛を殺して、この町を守るんだ。そのために、ずっと勘兵衛をマークしてきた。都の憲兵団長も、勘兵衛の情報を欲しがってる。だから、あたいは勘兵衛の情報を都の憲兵団長に売ってるんだ。生活のためにね」
梓が顔を上げた。
梓の包丁のスピードが、元に戻った。
そんな気がする。
気のせいかもしれん。 「オラは、勘兵衛の話を聞いた限りじゃ、勘兵衛はそげな悪い男に見えんがの」
オラは鼻で笑って、肩を竦めた。
梓の包丁の音が止まった。
「どれだけ、血が流れたと思ってる!?」
梓の声が強張る。
梓が握っている包丁が震えている。
「オラは、勘兵衛を救いたいがの。そうすれば、丸く収まると思うんじゃ」
オラは腕を組んで、暢気に首を縦に振っている。
「ふざけるな! あんたは、間違ってる!」
梓がオラに振り向いて、包丁を握りしめ、オラに包丁を向ける。
包丁を持っている手が震えている。 「子供にそげな物騒なもん向けるんか!? 結局お前も、やってることは勘兵衛と同じじゃろが!」
オラはテーブルを強く叩いて、椅子から勢いよく立ち上がる。
「ど、どういうことよ!? 教えてよ……教えなさいよ!」
梓が動揺している。
梓が首を横に振りながら。答えを求めるように、オラに歩み寄る。
「強者はの、なにがなんでも、弱者を黙らせるんじゃ。今、お前は、そうしておるじゃろ?」
オラは梓を力強く指さした。
鋭く梓を睨み付ける。 「!? あ、あたいは、勘兵衛と同じことしようとしてた……!?」
梓が立ち止る。
「違う。……そんなんじゃない」と言って、梓は否定するように首を横に振っている。
「勘兵衛を殺したとこで、お前の両親は天国で喜ばん! 死んだ仲間も浮かばれんのじゃ! 目を覚まさんか!」
梓を落ち着かせるように、オラは梓に歩み寄って、梓の腕を掴む。
大丈夫じゃ。
梓は、いくらでもやり直せる。
勘兵衛も。
誰も責めちゃいけんのじゃ。 「えっ?」
梓は放心状態だった。
「これから、考えればええんじゃ。みんなが幸せになる方法をな」
オラは梓の背中を優しく擦った。
「!? あ、あたいのしてきたことは、間違ってたんだ……」
梓は両膝を床につけて、包丁を床に落とした。
床に落ちた包丁が重い音を響かせる。
子供のように、梓はオラに抱き付き、壊れたように梓はオラの胸で泣き崩れた。 「饅頭でも食うて、落ち着け」
オラは梓を抱きしめて、梓の頭を優しく撫でた。
赤ん坊をあやすように。
「うん……」
梓が包丁を拾って、立ち上がる。
台の上に、包丁をそっと置いた。
テーブルの椅子に腰を下ろして、饅頭を口にほうばる。
「ゆっくり、饅頭を噛みしめて食うんじゃ。その饅頭が、お前の過ちじゃけえ」
梓は、饅頭を無邪気に食っている。
梓に歩みより、梓の肩に、オラは優しく手を置いた。
「……ありがとう。少し、気が楽になった」
饅頭を一つ食べ終わった梓が愚痴を零す。 「どっちが子供か、わからんの。これじゃ」
オラは鼻で笑って、梓の背中を小突いた。
「あ、はははっ。みっともないとこ、見せちゃった。あたい、あんたより大人なのにね」
梓が涙を手で拭う。
「オラは光秀。ちゃんと覚えるんじゃ、ええな?」
オラは胸を叩いて、胸を張った。
「光秀、か。あんたは強いね。見なおしたよ」
梓がオラに振り向く。
「仲直りじゃ。最初、オラ反抗的じゃったからの」
オラは照れて、人差指で頬を掻いて、梓から顔を背けた。
恥ずかしそうに、オラは手を差し出して、梓に握手を求める。
「よろしく、光秀。いや、師匠!」
梓が立ち上がって、オラと熱い握手を交わした。
梓がオラを抱きしめる。
そうじゃ。新しい明日が来るんじゃ。
新しい世界が。オラたちを待ってるんじゃ。 目覚めた力
第二話:呪われた神さま
「光秀。お前本気なのかい? 勘兵衛を救うだって?」
八重が暖簾から顔を出した。
八重が下駄を履く。腕を組んで、じっとオラの顔を見ている。
「や、八重さん!? 聞いてたんですか!?」
梓が驚いて、オラから慌てて離れる。
「ああ。つい、立ち聞きしちまったよ」
八重が肩を竦める。首を横に振る。
八重は椅子に腰を下ろして足を組む。
「いやっ~。お恥ずかしいでござるよっ」
梓が頭の後ろを掻いている。 「勘兵衛が人に戻れば、この町は平和になるはずじゃ」
オラは椅子に座って、饅頭を口にほうばる。
「馬鹿言うんじゃないよ。子供のお前になにができるってんだい?」
八重が腕を組んで、冷たい目でオラを鋭く睨み付ける。
「そうだよ? 銀二もいるんだよ?」
梓が両手に腰を当てて、オラの顔を覗き込む。
「……なにか、情報はないんか? 役立ちそうなやつじゃ」
オラは頼り気に、梓を見上げた。
梓。お前はくノ一じゃろ。
隠密じゃろ。
きっと、あるはずじゃ。
思わぬ掘り出し物がの。 「うーん。なにかあったっけ?」
梓は腕を組んで、頬杖をついている。
真剣に考え込んでいる。
「あたしが聞いた話じゃ。勘兵衛に殺された子供の霊が、勘兵衛の呪いで神さまになって、神社に棲みついてるらしいじゃないか」
八重が頬杖をついて、面白くもなさそうに話す。
「おおっ。それだっ! その噂話、あたいも聞いたよ! 確か、勘兵衛が祭りで遊んでる子供を拉致して、屋敷の地下牢に監禁して、子供の背中に呪いを彫ったんだっけ? それで、子供に食料も与えず、子供はそのまま餓死したんだよね……」
梓が思い出したように指を弾いて頷いた。
話し終わる頃には、梓は嘆いて俯いていた。 「惨い話だよ。子供の両親は捜索願いを出したんだけど、数日後に子供の遺体が川岸に上がったんだ」
八重が同情して、滲んだ涙を手で拭う。
「それで、その子の両親は勘兵衛が殺したとかで訴えちゃって、見せしめで民衆の前で晒し首にされたんですよね……」
梓は俯いたまま。
「……ああ。勘兵衛は子供が死んで神になる呪いを、監禁した子供にかけて、呪いで神に転生した子供が勘兵衛に力を貸す。ってことだろうね」
八重が嘆いて涙声で語る。
「噂じゃ、勘兵衛と銀二は不老不死の力を得たらしいです。勘兵衛の呪いで神になった子供が、勘兵衛に不老不死の力を与えたんだと思います」
梓は俯いたまま、握り拳を作る。
梓も嘆いて拳が震えている。
「すまん。オラは、そんなつもりで訊いたんじゃないけえ……」
オラは惨い話を聞いて、悲しさのあまり俯いた。 「その神さまとやらに頼んでみるのかい? よしとくれよ」
八重が頬杖をついて鼻で笑う。手をひらひらと振った。
「いやぁ。なんといいますかっ、もっとこう、楽しい話はないんですかねぇ。あっはははっ~」
梓が顔を上げて、頭の後ろを掻きながら、苦笑している。
「つまらんわ。ああつまらん。勘兵衛の呪いで死んだ子供の霊が神さまになったじゃと? そげんなおとぎ話、誰が信じるんじゃ」
オラは腕を組んで、鼻で笑った。
つまらないという感じで、そっぽを向いた。
「あっ。でも、でもだよ? あたいは信じてなかったんだけど、神楽が一度神さまに会ったらしいんだよね。神社で」
梓が思い出したように拳を掌で叩いた。恥ずかしそうに頭の後ろを掻く。 「……梓、それ本当なんか!? なんで黙ってたんね!?」
八重が思わず椅子から立ち上がり、初耳だという感じで目を見開いている。
「あっ。でも、けっこう前の話ですよ? あたい、八重さんに話そうと思って忘れてました」
梓が思い出したように、指を顎に当てている。
梓が「すみませんっ」と言って、八重に会釈する。
「じゃ、神楽に話を訊こうかの。その神さまとやらに、会いたくなったわい」
オラは指を弾いて、椅子から立ち上がる。 「勝手にしなよ。あたしゃ、神さまとか信じないんだ。あんたたちでやりな」
八重が深くため息を零した。
好きにしろというように、手をひらひらと振っている。
「栞ちゃんを見てくるけえ」
八重が暖簾の奥に消えて行った。
梓とオラは顔を見合わせた。
「梓、案内せえ。神楽はどこにおるんじゃ?」
オラは腕を組んで、暖簾の奥を顎でしゃくった。
「ふふふふっ。よおしっ。ご飯の支度も終わったし。神楽に会いに行こうっ!」
梓が片足を上げて、腕を上げた。 梓、お前は喜怒哀楽が激しいの。
でも、それくらいでないとの。
この町は狂っとるけえ。
オラと梓は、暖簾の奥に入る。
「奥はこないなっとるんか」
オラは辺りを見回して感心していた。
暖簾の奥に、二階へ続く立派な大階段がある。
天井が高く、天井の蛍光灯が幻想的に照らしている。
廊下に置かれた行燈が怪しく光る。
大階段の周りに、襖が閉まった部屋や、襖が開いた部屋が幾つかある。
それぞれの襖には、見事な風景の墨絵が描かれている。
廊下の床も、掃除が行き届いて、光が反射されて綺麗だ。 「この店、なんていうんじゃ?」
オラは、廊下に飾られた生け花に心を奪われていた。
「十六夜っていうんだぁ。神楽が店の名をつけたんだよぉ。この店、都の憲兵団長で政宗さんのはからいで建ててくれてねぇ。立派なもんだろぉ?」
梓がターンを決めて、ピースを決める。
「あっ、政宗さんはうちの常連でね。いつもお世話になってるんだ」
梓は、廊下の奥に向けて、背筋を伸ばして敬礼した。
「ふぅん。儲かってるんか?」
オラは生け花を触って、本物か造花かを確かめた。
この生け花、本物じゃ。世話が大変じゃろな。
生け花の香りを鼻で楽しむ。
「いやぁ、それがねぇ……あははっ~、大きい遊女の店ができちゃって。そっちにお客さんが流れちゃってねぇ。今、常連さんしかいないんだ」
梓が頭の後ろを掻いて苦笑いする。
その時、廊下の奥から、三味線の旋律が聞こえてきた。
まるで、別世界に誘うかのように。 「あっ。今、神楽。舞の稽古中かなっ?」
梓が腰に手を当てて、廊下の奥に聞き耳を立てる。
「舞って、なんじゃ?」
オラは腕を組んで考え込んだ。
「ああ。踊るんだよ、お客さんの前で。神楽の舞、綺麗なんだぁ」
梓が鼻歌を歌いながら、舞のお手本を見せた。
「なんじゃ、変な動きして。じゃったら、師匠の舞はこうじゃぞ」
オラも負けじと、梓を真似て舞の動きをしてみる。
ゆうても、舞は知らんがの。
適当に踊ればええんじゃ。こんなもん。
美人が舞をすれば、男は惚れるけえの。 「なにそれっ~。変なのっ」
梓がオラを指さして、お腹を抱えて笑っている。
「しっかし。疲れるのう、舞ちゅうのは」
オラは変な動きをしたので、息が切れた。
「よしっ。じゃ、大広間に行こうか。そこに神楽が居るから」
梓が胸を張って、両手に腰を当てた。
「師匠は先に行ってるけえの」
オラは廊下を走って、奥に向かった。
「こらっ~。廊下を走るなっ~!」
背中で梓の怒鳴り声が聞こえる。 その矢先、滑りやすい床で、オラは盛大に前のめりにこけた。
床との摩擦で、しばらく床を滑った。
「いってぇ。なんじゃ、この床は」
オラは床に座り込んで、膝を擦っていた。
「だから言ったでしょう。もうっ」
梓がオラに歩み寄って、両手に腰を当てて、オラの顔を覗き込む。
「大丈夫?」
梓が屈んで、心配そうにオラの膝を見ている。
「なんともないわい。子供は怪我がつきものじゃけえの」
オラは立ち上がって、なんともないように歩き出した。
「さっすが、師匠! 頼もしいやっ」
オラの背中で、梓の声が聞こえる。
オラは、大広間らしき襖を前に立ち止った。 「ここか? 大広間ちゅうのは」
オラは襖を指さす。
「そうだよぉ~」
梓が嬉しそうに鼻歌を歌っている。
オラは深呼吸した。
胸を撫で下ろす。
神楽、頼むで。
最高の土産話、訊かせてもらうけえの。
オラは、勢いよく襖を開けた。
「神楽はおるんか!?」
大広間は、とにかく部屋が広かった。
ここで、客とどんちゃん騒ぎでもするんやろか。
大広間には、大きな舞台がある。
ひょっとして、舞台で舞をするんかもしれんの。 それにしても、どんだけ十六夜ちゅう店は大きいんじゃ。
オラには一生かかっても払えん金をかけて、十六夜は建てられたんじゃろな。
都の憲兵団長、政宗か。噂じゃ、相当剣の腕がいいらしいが。
いくら強い奴でも、不老不死の勘兵衛と銀二相手じゃ、なんぼなんでも敵わんで。
噂の神さまの力を借りるしか、残された道はないんじゃろな。
「おや? 光秀じゃないか。どうしたんだい?」
大広間の真ん中で舞の練習をしていた、神楽の動きが止まる。
神楽は、和服に着替えていた。
同時に、三味線を弾いていた女の手が止まる。
女も和服を着ている。 なんじゃ。
三味線弾いとる女も遊女なんか?
まさか、この店のもんは全員くノ一じゃあるまいの。
えらいとこに来てしもうたで。
「神楽、和服に着替えたんか?」
オラは頭の後ろで腕を組んで、神楽に歩み寄った。
「神楽ぁ。遊びに来たよぉ~」
梓が神楽に勢いよく抱き付く。
神楽の豊満な胸に、顔を押し付ける。
「あ、梓。卑怯じゃぞ! 女やからといって、女の胸に飛び込みおって!」
オラは梓が羨ましくて、梓を指さす。
指先が興奮で震えている。
「へっへ~。いいだろっ~」
梓が舌を出す。 「すまんけど、外してくれないかい?」
神楽が扇を畳んで、三味線を弾いていた女に言う。
「はいっ。失礼します」
三味線を弾いていた女が、神楽に会釈して、大広間を出て行った。
「何の用だい? うちは舞の稽古していたんだ」
呆れたように、抱き付く梓を見ている。
「実は、神楽に訊きたいことがあるのだっ! 師匠、お願いっ!」
梓が素早く神楽から離れて、梓が胸を叩く。
梓がオラに会釈する。
「師匠? 光秀がかい?」
神楽は訳がわからずに鼻で笑って、呆然としている。 「か、神楽。お前、神さまに会ったことがあるんじゃろ?」
オラは畳に胡坐をかいた。
神楽の胸の妄想をやめて、咳払いして語る。
オラは神楽を一瞥する。
「うん。うん」
梓が瞼を閉じて、腕を組んで、首を縦に振っている。
「なんだい? 会ったことはあるけど……何を話したか覚えてないんだ」
神楽が畳に正座した。
首を傾げて、天井を仰いだ。
「ええっ~! これじゃ、振り出しだぁ!」
梓が肩を落とした。
梓がこめかみを両手の掌で押さえて、首を横に振った。 「なんじゃ。覚えとらんのか」
オラも肩を落とした。
「力になれなくて、すまないね。でも、それがどうかしたのかい?」
神楽が目をぱちくりさせて、オラと梓を交互に見る。
「それがさぁ。光秀と一緒に勘兵衛を救える方法を考えてたら、神楽が神さまに会ったって言うから」
梓が肩を落としたまま喋る。
その後、ため息を零す。
「そうじゃ。もしかしたら、そこに手がかりがあると思うての。神楽に話を訊こうと思ったんじゃ」
オラも肩を落としたまま喋る。
その後、ため息を零す。
「なかなか面白いことを考えたじゃないか。でも、覚えてないんだ」
神楽が扇を広げて畳んで、扇を畳みの上に置いた。 「それより、梓。光秀を師匠って言ってたけど。あれは、どういう意味だい?」
神楽が懐から煙管とマッチ箱を取り出して、マッチで煙管に火を点ける。
神楽が息を吹きかけて、マッチの火を消す。
使ったマッチをマッチ箱に入れて、畳の上にマッチ箱を置く。
「いや~。色々ありまして。複雑なんですよぉ」
梓が顔を上げて、頭の後ろを掻く。
「あ~あ。面白くないのう」
オラは胡坐をかいたまま、頭の後ろで手を組んだ。
「そや。あんたたち、地下の訓練所で戦ったらどうだい?」
神楽が廊下を顎でしゃくる。
煙管を吸って、煙管の煙を吐く。 「うん? どういうこと? よくわからんぞぉ」
梓が腕を組んで、考え込んだ。
「体を動かして汗を掻けば、少しはいい案が出るかもしれないじゃないか」
神楽が煙管を吸って、煙管の煙を吐いた。
「ああ、なるほどっ。それいいかも」
梓が納得したように、拳を掌で叩いた。
「訓練所じゃと? 十六夜の地下に、そげなもんがあるんか?」
オラは頭の後ろで手を組んだまま、天井を仰いだ。
「ああ。くノ一の訓練所さ。もしかしたら、忍びの素質が光秀にあるかもしれないね」
神楽がオラを、真剣な表情で見つめている。
「またまたぁ。神楽ったら、冗談上手いんだからぁ。光秀、まだ子供だよ?」
梓が両手を腰に当てて、高笑いしている。 「ああ、なるほどっ。それいいかも」
梓が納得したように、拳を掌で叩いた。
「訓練所じゃと? 十六夜の地下に、そげなもんがあるんか?」
オラは頭の後ろで手を組んだまま、天井を仰いだ。
「ああ。くノ一の訓練所さ。もしかしたら、忍びの素質が光秀にあるかもしれないね」
神楽がオラを、真剣な表情で見つめている。
「またまたぁ。神楽ったら、冗談上手いんだからぁ。光秀、まだ子供だよ?」
梓が両手を腰に当てて、高笑いしている。
「忍び、か。……栞が起きるまで、まだ時間があるじゃろ。梓、訓練所に案内してくれ」
オラは立ち上がった。 「えっ~。光秀、本気なの!? 怪我しても知らないよ?」
梓が慌てて両手を振って、オラを制する。
「梓。こうしている間にも、勘兵衛の手によって死人が出てるんじゃ。それでも、梓は何もしないで黙っておるんか?」
オラは冷たい目で、梓を鋭く睨んだ。
「!? や、やだなぁ。またキッツいお説教ですかぁ?」
梓が頭の後ろを掻いて苦笑する。
梓が俯く。
「やっぱり、光秀は漢だよ。相手してやりな、梓。それが、くノ一の隊長としての義理だろ?」
神楽が腕を組んで、煙管を吸う。
ゆっくりと煙管の煙を吐く。 「そ、そうだね。そうだよね」
梓は俯いて、拳を作った。
「なにしとんじゃ。さっさと案内せえ、梓隊長」
オラは大股で大広間を出て行く。
「よぉし。手加減はしないからねっ!」
梓が俯いたまま、深呼吸する。
顔を上げて、涙を手で拭って、小走りに大広間を出て行く。
梓は腕を振り回した。
「光秀、頼んだよ! お前なら、できるはずだ!」
背中で神楽の大声が、オラの胸に突き刺さる。
オラたちは、廊下の奥に吸い込まれるように消えて行った。
廊下の行き止まりまで、やって来た。 「行き止まりじゃぞ?」
オラは目の前の壁を睨んでから、つまらなそうに梓に振り向く。
「と、思うでしょ? にししし」
梓がなにやら、壁に掛けてある絵を外して、現れた小さなボタンを押した。
すると、目の前の壁が低い音を立ててゆっくり下がり始める。
行き止まりの奥に階段が現れた。
「か、隠し階段か!?」
オラは隠し階段を見て驚いた。
「この隠し階段、政宗さんのアイディアなんだぁ」
梓が隠し階段の前で、手を合わせて目を輝かす。 「ここは忍者屋敷か。他にも仕掛けがあるんじゃなかろうの?」
オラは呆れたように、梓を見る。
「あるよっ。畳の下とか壁の中に、忍びの武器とかね。後は隠し部屋とか、脱出用の隠し階段とか」
梓が不敵な笑みを浮かべる。
「……だと思ったわい」
オラは肩を落として、ため息を零した。
「ほらっ。行こうよっ」
梓がオラの腕に抱き付いて、隠し階段を下りる。
「お、おい。放さんかっ!」
オラは梓から放れようとして、バランスを崩し、盛大に階段から転げ落ちた。 「し、師匠っ~!?」
梓の哀れむ声が虚しく聞こえる。
やれやれ。
廊下で転んだり。
訓練する前に、オラから進んで怪我するわ。
これじゃ、先が思いやられる。
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