中国が2050年までにサッカーの強豪国入りを果たそうと、若年層の強化に力を入れ始めた。これまで男子代表がワールドカップ(W杯)に出場したのは02年日韓大会だけ。

 サッカー好きで知られる習近平国家主席の主導で競技人口や施設を増やす計画だが、育成を支える中国人指導者の不足など課題は多い。

 「もちろんプロになるのが夢」。広東省清遠にある恒大サッカー学校で、河南省出身の特待生、呉●辰さん(14)は、はにかんで話した。サッカー経験はほとんどなかったが、自分の意思で入学を決めたという。

 強豪プロチーム、広州恒大の実質的なオーナーである不動産開発大手、中国恒大集団が約20億元(約325億6000万円)を投じ、スター選手育成を目指して12年に開校した同校には、小学生から高校生まで約2500人が在籍。一般教科も学びながら練習に励んでいる。

 スペインのレアル・マドリード財団と提携し、現地から20人超のコーチを招請。広大な敷地には約50面のグラウンドがある。劉江南校長は「習主席のサッカー改革は追い風となる。多くのスター選手を育て、中国サッカーの振興に貢献したい」と意気込む。

 中国のクラブチームが近年、欧州や南米の有名選手を高額な報酬で獲得する「爆買い」で躍進する一方、代表チームは低迷が続く。

 人口13億人超の中国だが熾烈(しれつ)な受験戦争に備えるため、幼少時から塾通いする子供が多く、日本のような学校の部活動もないため、競技人口は一定程度に限られるとみられている。

 習指導部は15年以降(1)20年までにサッカー場を7万カ所以上設置、競技人口を5000万人以上に増やす(2)25年までにサッカーに力を入れる学校を5万校設立−といった目標を相次ぎ打ち出した。層を厚くし全体のレベルを押し上げる狙いだ。

 ただ強豪国入り実現には課題も。浙江省杭州市のプロチーム、杭州緑城の育成学校で副校長を務める元日本代表の倉田安治氏(54)は「サッカーは判断力、決断力が求められるスポーツ。選手の主体性や想像力、団結心を総合的に育むことが大切だ」と強調し、それらの能力を伸ばすことができる中国人指導者は少ないと指摘する。

 倉田氏は、物事を押し付けがちな中国の教育習慣もサッカーの指導方法に影響しているとみる。「サッカーの能力向上には、教育全体の在り方も変えていくことが必要ではないか」と語った。(杭州、広州 共同)

●=日の下に立

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練習する恒大サッカー学校の生徒たち=広東省清遠(共同)